拒否権付種類株式(黄金株)導入の際のオーナー側の注意点を解説
拒否権付種類株式(黄金株)導入の際のオーナー側の注意点を解説します
オーナー側の留意点
拒否権付種類株式は、株主総会(取締役会設置会社においては株主総会又は取締役会)において、決議すべき事項について拒否権付き種類株式の株主による種類株主総会の決議を要するものとしますので、すべての議案において、幅広い拒否権を有することができます(いわゆる黄金株といわれます)。
しかしながら、取締役会非設置会社において、取締役の決定に関する事項については、拒否権付種類株主による種類株主総会を要するとすることは出来ないとされています。したがって、取締役の業務執行決定に対してオーナーが拒否権を持ちたい場合は、導入前(又は同時に)取締役会設置会社としてその登記をする必要があります。
取得されるリスク
拒否権付種類株式について、一定の事項(例えば、役員選任に関する事項)のみ拒否権を持たせたいと考えた場合は、種類株主総会の決議を不要とする定款の定め(会社法322条2項)を設けることも考えることが可能です。しかしながらこの定めを設けた場合のリスクとしては、もし事業承継などにおける後継者が総株主の議決権の90%以上を有する場合は、特別支配株主となりますので特別支配株主の株式等売渡請求を行使された場合は、オーナーが有する拒否権付種類株式(黄金株)を強制的に取得されてしまうリスクが発生します。よって後継者が有する議決権割合を必ず考慮した上で、判断をする必要があります。
また、オーナー死亡による相続発生によって相続人が拒否権付種類株式(黄金株)を取得して経営に入ってくるような事態は避ける必要があります。
リスク回避手段
上述の場合(種類株主総会の決議を不要とする定款の定めがある場合)、後継者がこれを契機に株式無償割当てなどを行い、拒否権付種類株式が他の種類株主に割り当てられることのないよう対策をする必要があります。具体的には、拒否権付種類株式の発行可能株式総数は発行済株式と同数にしましょう。
通常、発行済種類株式総数A種(黄金株)1株、発行可能種類株式総数A種(黄金株)1株に設定することが多いです。
また、相続における対策としては、死亡を原因として取得条項を付すことが考えられます。また、その他、定款に相続人売渡請求について盛り込んで置き、拒否権付種類株式(黄金株)の保有者が死亡したときは、会社が当該株式を買い取ることが出来るようにしておく方法もあると考えます(※ただこの場合も財源規制に注意)。
拒否権付種類株式のメリデメ
拒否権種類株式(いわゆる黄金株)はとても強力な種類株式です。強力ゆえに多くの注意点が存在しますので、会社の実情にあわせてご判断ください。
拒否権付種類株式を導入するメリットとしては、事業承継において、子供に株式の大半を譲ったあとであっても、一定の決議事項につき会長が拒否権を有していた場合、間違った方向に会社が進むことを防ぐことができます。後継者の成長速度をみて将来的に拒否権付種類株式を会社に取得させて消却し手を離れるなど計画的に進めていくことが可能となります。
なお、会社が拒否権種類株式を取得して消却した場合であっても、登記記録上は拒否権種類株式を発行できる状態となっていますので、記載を抹消する場合は、定款変更決議を行い抹消する必要があります。
また、デメリットとしては、やはり株主平等原則の趣旨に照らして、株主の不満がたまりやすいところや、濫用による経営上のマイナスリスクの発生、事業承継税制が適用されないというデメリットがあります。メリット・デメリットそれぞれを考慮した上で、導入の検討をしていただければと思います。
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本日は拒否権付種類株式(黄金株)導入の際のオーナー側の注意点を解説しました。
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