発信主義と到達主義、自己株式取得通知の期限をどう考えるか
発信主義と到達主義の違い
会社法上の通知には、発信主義と到達主義があります。
・発信主義→期限までに発送すれば効力あり
・到達主義→期限までに相手方に到達していることが必要
株主への通知については、株主名簿上の住所に宛てて行えば足り、しかも「通常到達すべき時に到達したものとみなされる」(会社法126条1項・2項)とされています。
したがって、郵便事故で遅れても、通常到達すべき時に到達したと扱われます。
原則は到達主義で、条文に「発しなければならない」と明記されている場合に限り発信主義となります。代表例は株主総会の招集通知です。
特定株主からの自己株式取得通知
会社法160条2項に基づき、会社が特定株主から自己株式を取得する場合には、他の株主にも「私の株式も買ってください」と請求できる旨を通知しなければなりません。
この通知は、会社法施行規則28条により、株主総会招集通知と同じ期限とされています。
ただし、条文を素直に読むと「到達主義」と解されるため、実際の発送は招集通知よりも早めに行う必要があることになります。
通知と請求の期間
・招集通知期限が1週間前の会社 → 通知は総会1週間前までに到達 → 請求期限は総会3日前まで
・招集通知期限が2週間前の会社 → 通知は総会2週間前までに到達 → 請求期限は総会5日前まで
この場合、通知の到達から請求期限までの間隔はわずか数日です。
株主にとっては非常にタイトなスケジュールとなり、実務上は請求期間を広めに取るなどの調整が必要となります。
実務的な判断
通知が遅れれば取得手続全体が無効となるリスクがあるため、特定株主からの自己株式取得を行う際には、スケジュール管理が重要です。
今回の事例では、会社側から「余裕がないので特定株主からの取得はやめる」と判断されました。小さな手続上の違いでも、実務に大きな影響を与えるため、発信主義か到達主義かの見極めは欠かせません。
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本日は、発信主義と到達主義、自己株式取得通知の期限をどう考えるかについて解説いたしました。
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