株主総会の決議を要する事項と最短開催の要件を解説
株主総会の決議を要する事項と最短開催の要件を解説
決議要件と手続きの方法
会社が事業を行うにあたって、必要事項を迅速に決定できなければタイミングを失ってしまう場合があります。会社が事業を行うにおいて、取締役会の決議(取締役会設置会社でない場合は取締役の決定)のみで決定できる事項と、株主総会の決議を経なければ決定できない事項があり、株主総会の決議を要する場合は、株主を召集しなければならないので、提案から決定まで一定の時間を要することになります。したがって、迅速な意思決定をするには、株主総会の決議要件と手続きの方法をあらかじめ知っておく必要があります。今回は、株主総会の決議を最短で行うにはどのような手続きを経る必要があるかを解説していきます。
株主総会の決議を要する事項
まず、株主総会の決議を要する事項は以下の通りです。
1.取締役・監査役などの役員の専任、解任(会社法339条・341条)
2.役員の報酬の決定(会社法361条・379条・387条1)
3.取締役の協業取引や利益相反取引の承認(356条1項)
4.合意による自己株式の取得(156条1項)
5.譲渡制限株式の譲渡承認(139条)
6.株式分割の決定(183条)
7.剰余金の配当(454条1項)
8.計算書類の承認(483条2項)
9.資本金の減少、準備金の減少、剰余金の減少など
1.組織再編行為の会社の基礎の変更(会社法466条・467条1項・783条1項・795条1項・804条1項・816条の3・447条1項・471条3号・473条)
2.株主の地位に関わる事項(会社法175条1項・171条1項・180条2項)
3.株主の利害に関わる事項(会社法140条2項・5項・156条1項・160条1項・454条4項)
4.募集株式・新株予約権の発行などに関わる重要事項(会社法199条2項・200条1項・202条3項4号・204条2項・205条2項・238条2項・239条1項・199条2項・201条1項・238条2項・240条1項)
5.会社支配に関わる重要事項(309条1項・425条1項)
1.その株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議
①定款変更により株式を譲渡制限株式に変更すること(会社法309条3項1号・107条1項1号・同条2項1号)
②組織再編行為によって、株式が譲渡制限株式等変わること(会社法309条3項2号・同項3号)
2.総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上にあたる多数をもって行う決議
全株譲渡制限会社において、剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会の議決権につき株主ごとに(属人的に)異なる取り扱いを行う旨の定款変更(当該定めを廃止する者を除く)を行う場合(309条4項)
株主総会の招集
株主総会を開催するときは、株主に召集通知をしなければなりません。株主総会の召集には一定の期間を設けなければならないので、この期間によって株主総会の決議を経るのに時間を要することになります。しかし、株主総会の召集の手続きは、会社の形態によって異なります。また、短縮することも可能です。取締役会を設置している会社であって公開会社の場合は、株主総会の2週間前までに召集通知を書面で発する必要があります。一方、非公開会社においては一週間前までに召集通知を書面で発する必要があります。また、取締役会を設置していない会社であって、非公開会社の場合は、一週間前までに通知すれば書面以外の方法であっても可能です。なお、定款で定めることによって1週間よりも短縮することもできます。
召集通知の短縮は、定款によって定める以外にも、株主全員の同意があれば期間の短縮は可能です。
召集通知の短縮
①定款によって1週間よりも短い期間を定める
②株主全員の同意によって期間を短縮する
さらに、召集通知を省略することも可能です。召集通知を省略するのは、一定の場合を除き株主全員が同意することによって省略できます(会社法300条)。株主全員に出席の機会が確保されるのであれば、招集通知を発することなく、株主総会を開催することができるので、当日に開催することも可能です。
その他に、株主全員の同意を得られれば、株主総会の開催を実際にすることなく書面にて決議を行うことも可能です(会社法319条1項)。この方法を、みなし決議といい、株主が100%親会社であったり、株主が家族である場合に多く利用されます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は株主総会の決議事項と最短開催の要件などについて解説しました。
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