法人手続

吸収分割の法的性質と手続き、登録免許税を解説

吸収分割に関する手続


吸収分割とは

吸収分割とは、株式会社又は合同会社が事業に関して有する権利の全部又は一部を他の会社に承継させることをいう。
組織再編の一形態とされる合併の場合であれば、被承継会社は消滅してしまうのに対し、吸収分割の場合は分割会社が存続する。
したがって、譲渡制限株式を一般承継するか否かに関して争いがあるが、有力説においては、承継会社は譲渡制限株式を一般承継しないと解している。しかし、吸収分割を行う手続きは合併と同様である。

吸収分割手続き

例えば、A株式会社が、B株式会社の一部の事業を承継することとなったとする。
この場合、まず、A株式会社が吸収分割承継会社となり、B株式会社が吸収分割会社となって、吸収分割契約を締結しなければならない(会社法757条)。
次に、吸収合併契約に関する書面を備置き、事前開示する必要がある(会社法782条)。
なぜなら、契約内容を開示することによって株主がその内容を知り、議決権の行使をどのようになすかを判断することができるからである。
そして、吸収分割会社、吸収分割承継会社ともに、効力発生の前日までに株主総会の決議の承認を受けなければならない(会社法783・795条)。
この場合、株主総会の特別決議となるので、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席をした株主の議決権の3分の2以上をもって可決となる。

また、反対株主には株式買取請求権が認められており、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できる。(会社法785・797条)。さらに、債権者が不利益を受けるおそれがあるので、①債権者意義手続(会社法789・799・810条)、②格別の催告を受けなかった債権者に対する連帯債務(会社法759条2項3項、764条2項3項)、詐害的会社分割に対する残存債権者の直接請求権(759条4項、764条4項)が定められている。吸収分割会社が、分割対価として受けた株式を株主に交付する場合は、分割会社の債権者は異議を述べることができる。それ以外の場合では、合併会社と異なり、吸収分割会社は存続するので、意義を述べることのできる債権者は、吸収分割後に分割会社に対し債務の履行を請求することができなくなる者のみとなる。したがって、吸収分割会社の残存債権者は異議を述べることができない。それに対して、承継会社の債権者は、合併における存続会社と同様であり、異議を述べることができる。このような手続きを経て、吸収分割の効力は発生する。効力発生後は、事後開示をし(会社法791条、801条、811条、815条)、登記をしなければならない。

登記申請手続きと登録免許税

A株式会社とB株式会社の変更登記は同時に申請しなければならない。A株式会社とB株式会社の管轄が異なる場合に申請する登記所は、吸収分割承継会社の所在地において2つの登記申請を行う。従って、B株式会社の変更等きは経由申請となる。登録免許税は、増加した資本金の額の1000分の7となる。計算した額が3万円以下の場合は3万円となる。

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本日は吸収分割の手続きと法的な基本論点について解説しました。
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