法人手続

【1分で分かる】会社法上の債権者保護手続きとは何か?個別催告の省略、知れたる債権者の範囲など

債権者保護手続きとは何か

【1分で分かる】会社法上の債権者保護手続きとは何か?


債権者保護手続きとは

債権者保護手続きとは、組織再編を実施する場合に自社の債権者の利益を保護するために、会社分割や合併などのような組織再編を行う通知、組織再編に対して異議を述べる機会を与えるための手続きになります。
つまり、要約すると手続きに異議があれば一定期間内に伝えてくださいという手続きです。

資本金の減少や合併等の組織再編行為といった債権の弁済について支障が出るリスクがあるために行われるのです。
もし債権者が一定期間の間に異議を唱えた場合、会社は債権者に対して弁済、相当の担保の提供、信託銀行等へ相当の財産を信託といった対応を実施しなければなりません。
一方で、十分な資産がある場合やすでに担保を提供しているというように債権者を害するおそれが特にない場合は、債権者の意義に対して対応する必要はありません。

債権者保護手続きの手順

まずは官報(国の機関紙)へ公告の掲載手配を行います。官報販売所へ問い合わせを行い掲載手続きを行います。
例えば、合併などの組織再編手続きを行う場合には、以下の事項を官報に公告しなければなりません。

・吸収合併をする旨
・消滅会社の商号・住所
・存続会社と消滅会社の計算書類に関する事項として法務省令で定められているもの
・債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨



掲載内容は手続きによって異なります。官報販売所に手続きに応じた掲載文案ひな形がありますので確認しましょう。
そして、知れたる債権者に対しては各別に催告する必要があります。

知れたる債権者への格別の催告

官報公告への掲載と合わせて知れたる債権者へ個別催告をする必要があります。

知れたる債権者とは?注意点

知れたる債権者とは、会社に対する債権者のことで、知れている債権者を指します。
知れたる債権者の範囲は、条文上は、金額の大小にかかわらず会社に対する債権者全員を指します。しかし実務慣行上は、日常生活によって生ずるような軽微なもの(例えば通信費や光熱費など)であれば、ことさらに知れたる債権者として、個別催告をする必要はないとする見解もございます。

例えば、給料債権や賃料債権については特に支払いを遅滞している等の特別の事情がなければ、債権者には含まれないと解されています。
また公共料金を含む小額債権については、実務上は小額債権者に対して催告書を送付しないという扱いをしています。この少額債権とはいくらを指すのかについては、会社がある程度自由に判断し決定します。
会社状況や規模次第になりますが、会社によって少額債権は50万円程度であると考えることもできますし、500万円を少額債権と考えることもできますので、この点は会社のご判断で形式的に決定していくことになります。
1つの指針としては、①形式的に少額債権は●●万円と決定してしまうこと、②会社の状況的を鑑みて現在の債権者全員に弁済することができるかどうかによって決定する。
ということで良いかと考えます。ただし銀行借入れの場合は金額の大小関わらず送付を行うのが慣行となります。

催告範囲を限定した場合に、万が一異議が出た場合は、弁済などを行えば良いと考えることもできますが、債権者保護手続の懈怠を理由として、組織再編行為の無効等を主張する訴訟をおこされるリスクもありますので、選別は十分に注意が必要となります。

通知方法

知れたる債権者への個別催告方法ですが、通知方法の指定はありません。通知する内容は公告と同じ内容で問題ありません。

各別の催告を省略するには

通常は債権者には各別催告をする必要があるのですが、定款所定の公告方法が時事に関する事項を掲載している日刊新聞紙、もしくは電子公告である会社に対しては、官報とともに定款所定の公告方法による公告を行うことで、債権者への各別の催告を省略することができるようになっています。
これを「二重公告」もしくは「ダブル公告」とよびます。

ダブル公告

ダブル公告によって、債権者保護手続きをする場合は債権者には個別通知は行われませんので、日刊新聞紙や官報などを見ない限りはなかなか気付くことが難しい場合もあります。ただし、法令上はそれでも特に問題はありません。
ただ、債権者が一人もいない場合は、各別の催告をする必要がありませんし、このほかにも、吸収分割をする際に吸収分割をした後、分割会社の債権者が分割会社に債務履行を請求することができる場合において、分割会社は公告及び催告をする必要がないと会社法で定められています。
ただ、分割型吸収分割における分割会社は、債権者保護手続きを省略することはできませんので注意しておくと良いでしょう。

ダブル公告でも個別催告を省略できないケース

また、ダブル公告をしても知れている債権者への各別催告が省略できないケースもあります。
吸収分割や新設分割で分割会社に対し債務履行をできない債権者のうち、不正行為によって生じた債務の債権者に対して省略ができません。
また、合資会社や合名会社から株式会社へと移行するような組織変更の場合も省略ができません。

まとめ

本日は債権者保護手続きと個別催告についてご紹介いたしました。
会社法人登記に関するご相談は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

債務整理・商業登記全般・組織再編・ファンド組成などの業務等を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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