法人手続

法務局における附属書類の閲覧制度と実務上の留意点

登記関係書類(附属書類)の閲覧制度

登記実務では、「過去にどのような手続がなされたか」「どの議事録が添付されていたか」を確認したい場面が少なくありません。
本稿では、法務局が保管する登記関係書類(附属書類)の閲覧制度について、条文上の根拠と運用上の注意点を整理します。

附属書類の保存期間

登記の申請書および附属書類の保存期間は、受付日から10年間とされています(商業登記規則第34条第4項第4号)。
もっとも、令和元年10月1日以前は保存期間が5年間とされていたため、古い登記についてはすでに破棄されている可能性があります。
過去の経緯確認を行う際は、対象登記の受付日を基準に保存期間の経過有無を確認する必要があります。

附属書類の閲覧請求の法的根拠

登記簿に添付された附属書類(申請書を含む)の閲覧は、商業登記法第11条の2に基づき、
「利害関係を有する者」が手数料を納付して請求することができます。

ここでいう附属書類とは、商業登記規則第10条に定義される「申請書およびこれに添付された書面」を指します。
したがって、登記完了後であれば、申請書を含むこれらの資料の閲覧が可能です。

登記申請の当事者による閲覧可否

(1) 閲覧の可否
登記申請の当事者は、当該登記簿の附属書類について利害関係人に該当すると考えられ、
閲覧請求を行うことができます。

もっとも、「登記済み」になった後の附属書類に限られ、
登記申請中(審査中)の申請書については、原則として閲覧請求できません。
申請中の段階では、登記簿に未反映であり、第三者開示の対象とならないためです。

(2) 謄写の可否
附属書類の謄写を認める規定は存在せず、法務局でも原則として認められません。
ただし、法務局によっては写真撮影を許容する運用があるため、事前に確認が必要です。

第三者による閲覧請求と「利害関係」の要件

第三者であっても、法律上の利害関係を有する場合には閲覧が可能です。
商業登記規則第21条第2項・第3項により、
閲覧請求書には「利害関係を明らかにする事由」と「利害関係を証する書面」の添付が求められます。

この「利害関係」とは、単なる事実上の関心ではなく、
当該登記に関して法律上の利害関係を有することを意味します(神崎満治郎ほか『論点解説商業登記法コンメンタール』35頁)。

また、平成28年6月23日民商第98号通達により、
たとえば「取締役解任登記がされた会社における元取締役で主要株主である者が、株主総会議事録の閲覧を求め、訴訟提起を予定している場合」には、
閲覧請求の利害関係が肯定され得るとされています。

ウェブ会議による附属書類の閲覧

令和6年6月24日から、法務局ではウェブ会議システムを用いた附属書類閲覧が導入されました。
来庁が難しい場合でも、事前申込みのうえオンラインで閲覧が可能です。
詳細は法務省ホームページ「ウェブ会議による登記簿の附属書類等の閲覧について」を参照します。

登記済書類と申請中書類の区別を明確に

附属書類閲覧請求の実務では、登記が完了した後の申請書・添付書類は閲覧対象となりますが、
登記申請中の書類については、原則として閲覧請求できない点に注意が必要です。
(審査中の段階では公示対象外であり、法務局職員以外の閲覧は認められません。)
ただし、役員解任登記などが申請されている状況で、仮の地位を定める仮処分申立などを行うために必要な場合は、閲覧が認められます。

また、閲覧できる範囲は「利害関係を有する部分」に限られるため、
請求書において閲覧目的・範囲・利害関係を具体的に記載することが重要です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、法務局における附属書類の閲覧制度と実務上の留意点について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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