登記申請手続(各種)

特定の株主から自己株式を有償取得する場合の手続きとは

自己株式の取得と株主平等原則

株式会社は、株主への利益還元や資本政策の柔軟な運用を目的として、株主から自己株式を取得することがあります。
もっとも、会社法上は「株主の平等取扱い」が大原則です。特定の株主のみが株式を会社に売却し、現金化できる機会が与えられると不公平となるため、一定の手続が法定されています。
単に「株式譲渡契約」を結び、「譲渡承認決議」を経るだけでは、有償での自己株式取得は認められません。
なお、無償取得の場合は株主保護の必要がないため、株主総会の決議を経ずに行うことが可能です。

財源規制に注意が必要

会社が有償で自己株式を取得する際には、分配可能額の範囲内で行わなければなりません(会社法461条1項2号)。
分配可能額を超える自己株式取得は無効となるため、資本金や資本準備金の減少等によって分配可能額を確保する必要があります。

特定の株主から有償取得する際の流れ

特定の株主のみから株式を取得する場合でも、他の株主に「売主追加請求権(会社法160条以下)」を与えるのが原則です。
典型的な手続きの流れは以下のとおりです(取締役会設置会社・普通株式のみを前提)。

1.招集通知・売主追加請求権に関する通知
・株主総会2週間前(または1週間前)までに、株主に対して「売主追加請求権を行使できる旨」を通知。
・株主は総会3日前(場合によっては5日前)までに請求可能。

2.株主総会決議(特別決議)
・定める事項
 ・取得株式数
 ・交付する金銭等の内容・総額
 ・取得可能期間(最長1年)
 ・特定株主に対する通知を行う旨
・特定株主は議決権を行使できない(利害関係排除)。

3.取締役会決議
・具体的に決定する事項
 ・取得株式数
 ・1株当たりの取得価格
 ・総額
 ・申込み期日

4.株主への通知
・上記取締役会決議の内容を通知。

5.株主からの申込み
・通知を受けた株主は、期日までに取得希望株数を明示して申込み。
・申込みがあれば、会社は承諾不要で自動的に譲受けが成立する(会社法159条)。

取得株式数を超える申込みがあった場合

予定取得株式数100株に対し、複数の株主が合計150株を申込みした場合、会社は按分処理(均等割)を行います。
例:株主A・B双方が100株ずつ申込み → A50株・B50株取得。

登記の要否

自己株式を取得しただけでは、発行済株式総数に変化がないため登記不要です。
ただし、取締役会決議により自己株式を消却した場合には、効力発生日から2週間以内に「発行済株式数の変更登記」が必要です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、特定の株主から自己株式を有償取得する場合の手続きについて解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから