相続、遺産承継業務

数次相続が発生したときの相続登記のやり方と注意点を司法書士が解説

数次相続とは?

数次相続とは、ある相続が完了する前に次の相続が発生することを指します。
例えば、祖父が亡くなった後、祖父の相続登記が未了のまま、その相続人である父も亡くなってしまったケースなどです。このような場合、相続登記は「祖父→父→子」と2回分の相続手続をまとめて行う必要があり、実務上は「数次相続登記」と呼ばれています。

数次相続登記が必要になる典型例

・不動産の登記名義人が祖父のままで放置されていた
・父親が祖父の遺産を相続する予定だったが、登記をしないまま亡くなった
・結果として、孫が相続するには「祖父→父→孫」の順で相続登記を要する

このようなケースでは、関係する被相続人全員の戸籍を遡って収集し、それぞれの相続人を確定した上で登記申請を行う必要があります。

数次相続と代襲相続の違い

区分 数次相続 代襲相続
発生パターン 相続人が先に亡くなり、次の世代に相続が連続する 本来の相続人が相続開始時点で死亡しているため、その子が相続人となる
手続回数 相続が複数回発生するため、その都度の登記が必要 1回の相続手続のみで登記可能
祖父死亡→父が相続人だが登記未了で死亡→孫が相続 父が祖父より先に死亡→孫が代襲して祖父の相続人になる


数次相続登記の進め方

【基本の流れ】
・各相続における相続人の確定
・戸籍・住民票・評価証明書等の必要書類の収集
・登記申請書・相続関係説明図の作成
・登記の申請(中間省略の可否によって1回または複数回)
・登録免許税の納付

【中間省略登記の活用】
以下の条件に該当する場合、中間の登記を省略し、最終相続人への登記を1回で完了できます。

・中間の相続人が単独相続していた(相続放棄・特別受益等を含む)
・中間の遺産分割協議で単独承継が明確であった

例:祖母から一人っ子である父が単独相続→その後父死亡→子が相続→中間省略登記で「祖母→子」と一括登記可能

登記申請書作成時の注意点

・「原因」欄は被相続人の死亡日(相続開始日)を明記
・中間省略する場合、相続人欄には中間の相続人を記載しない
・遺産分割協議書は「被相続人→相続人→最終相続人」の関係を明記


登録免許税の免税措置(令和9年(2027年)3月31日まで)

数次相続のうち、1回目の相続登記が令和6年4月以降に行われる場合、登録免許税の免除が適用されることがあります。

登録免許税 免除対象
通常:固定資産税評価額の0.4% 一次相続での土地登記(建物は対象外)

※申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と明記が必要

その他の実務上のポイント

1. 法定相続情報一覧図の分割作成
法定相続情報は1つの相続につき1通。数次相続では、一次・二次それぞれで別個に作成する必要があります。

2. 遺産分割協議書は相続ごとに作成
相続人兼被相続人の関係を明記し、協議当事者の立場を混同しないよう記載。

3. 相続放棄との関係
相続放棄は一次相続時にのみ有効。一次で放棄していれば、その人は二次相続においても相続人とはなりません。

4. 相続税の留意点
・相続開始から10ヶ月以内に申告・納付が必要
・基礎控除は最初の相続時点の法定相続人の数で計算
・相次相続控除の活用可能性あり(2回目の相続が10年以内に発生した場合)

手続きのご依頼・ご相談

数次相続の登記手続は、単なる相続登記とは異なり、登記順序・関係書類・省略可否・税務対応など、複数の視点からの判断が求められます。登記義務化の流れの中で、判断を先延ばしにするリスクは高まっています。相続人の中で「誰が、いつ、どのように」登記すべきか、不明点がある場合には早めに司法書士にご相談ください。
相続登記、会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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