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夫婦財産契約登記とは?結婚前に備える未来のための財産管理の新常識

夫婦財産契約登記とは?人生を支える財産管理の新常識



ご結婚を控えたお二人が、将来の安心のためにできる準備のひとつが「夫婦財産契約登記」です。
この制度は、夫婦間の財産管理や分割に関する取り決めを婚姻前に法的に明確化するものです。
「夫婦財産契約登記」という言葉自体は馴染みが薄いかもしれませんが、財産や事業の管理が関わる場面では非常に重要な役割を果たします。
本コラムでは、夫婦財産契約登記の必要性やメリット、具体的な手続き方法について詳しく解説します。

夫婦財産契約登記とは?

夫婦財産契約登記は、婚姻前に夫婦間で財産管理や分割に関するルールを取り決め、その内容を法務局に登記する制度です。
具体的な契約例としては、以下のような内容があります。

・婚姻中に得た財産は夫婦共有とする。
・夫の事業用財産と妻の家庭用財産を明確に分けて管理する。
・妻が婚姻前から所有する不動産は離婚時も妻が単独所有する。

これらの契約内容は、婚姻時点で効力が発生し、財産に関するトラブルを防ぐための基盤となります。

婚姻前に行わなければならない理由

上述のとおり、夫婦財産契約およびその登記は結婚前に行う必要があります。
夫婦財産契約登記が婚姻前に必要とされるのは、法律上の要件によるものです。
具体的には、以下のような理由があります。

1.婚姻後は新たな契約を締結できない
民法の規定により、夫婦財産契約は婚姻前にのみ有効に締結できます。婚姻後に財産契約を行うことは法律上認められていません。

2.婚姻時に取り決めを確定させる必要性
婚姻後の財産の増減やトラブルを防ぐために、事前にルールを確定させておくことが求められます。

第756条(夫婦財産契約の対抗要件)
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

3.第三者に対する効力の確保
婚姻後に夫婦間で合意しただけでは、第三者に対して効力を持たせることができません。しかし、婚姻前に登記しておけば、夫婦間の取り決めを夫婦の承継人及び第三者にも主張できます。

夫婦財産契約登記が必要な場面

1. 事業を営む場合
事業を行う夫婦にとって、家庭財産と事業財産を明確に分けておくことはリスク管理上重要です。契約を登記しておけば、事業リスクが家庭財産に及ぶことを防げます。

2. 再婚やステップファミリーの場合
再婚家庭では、前婚の子どもへの相続や新たな配偶者との財産分割に関するトラブルが発生しやすいものです。夫婦財産契約登記により、財産の帰属を明確にしておくことで安心感を得られます。

3. 財産が多い場合や相続を見据えた場合
婚姻前にそれぞれが持つ資産が多い場合、夫婦間で財産の管理ルールを定めておくことで、結婚後のトラブルを防ぎ、相続時の混乱を避けられます。

夫婦財産契約登記の手続き

夫婦財産契約登記を行うには、以下のステップが必要です。

1.契約内容の合意
婚姻前に、夫婦間で十分に話し合い、財産の管理や分割に関するルールを決定します。
2.契約書の作成(公正証書が望ましい)
決定した契約内容を公証役場で公正証書にします。
3.登記申請
契約書を法務局に提出し、夫婦財産契約登記を申請します。


夫婦財産契約登記の注意点

1. 婚姻前にしか手続きができない
一度婚姻すると、婚姻後に新たな夫婦財産契約を締結し、登記することはできません。そのため、婚姻前に慎重に内容を検討することが必要です。

2. 一度登記すると変更が難しい
登記後は、基本的に契約内容を変更することができません。将来のリスクや生活環境の変化を見据えて、内容を十分に検討しましょう。

3. 法律や公序良俗に反する契約は無効
契約内容が法律や公序良俗に反する場合、契約そのものが無効となる可能性があります。契約の妥当性については、司法書士や弁護士に確認することが重要です。

「夫婦財産契約」と「婚前契約」のちがい

「婚前契約」という表現を目にすることがあります。どちらも結婚前に話し合いのもと取り決めをする契約を指しますが、夫婦財産契約と婚前契約はまったく同じものではありません。
夫婦財産契約は、日本の民法に基づく法的な制度です。この契約では、民法が定める標準的な夫婦の財産関係(法定財産制)とは異なる財産の管理方法や分割方法を、結婚前に合意し、登記を通じて第三者対抗要件を取得します。名前の通り、夫婦財産契約は財産に関する取り決めに特化した契約であり、結婚生活全般についての取り決めを含むものではありません。

一方で、「婚前契約」は法律用語ではなく、一般的な表現です。この契約では、夫婦の財産管理だけでなく、家事の分担、育児の役割、仕事への姿勢、離婚時の条件など、夫婦生活全般に関するルールを盛り込むことができます。そのため、内容は契約する当事者の自由に任されています。

このように、夫婦財産契約と婚前契約には明確な違いがあります。ただし、両者が完全に独立しているわけではありません。夫婦財産契約は、婚前契約における財産に関する取り決めの一部と考えることができます。つまり、婚前契約の中に夫婦財産契約が含まれる形で扱われるケースもあるのです。

その他の要点

夫婦財産契約は、登記は対抗要件ですので、婚姻前に締結し登記をすれば、第三者対抗要件を具備することが可能です。
一方で婚姻前に契約だけして登記をしなかった場合は、第三者対抗要件を具備しないだけで契約自体は有効です。
※夫婦財産契約を作成したら必ず登記されるものではなく、登記する方はごく一部です。

夫婦財産契約は、まだ広く知られているとは言えませんが、近年、登記件数は増加傾向にあります。
その背景としては以下のような要因が考えられます。

1.離婚率の上昇により、財産分与やトラブルを回避したいという意識の高まり。
2.夫婦間の価値観や財産に対する考え方の変化。
3.芸能人や著名人が夫婦財産契約を締結したことで、認知度が向上していること。

また、夫婦財産契約を締結する際、公正証書で作成することは必須ではありませんが、公正証書で作成するのが望ましいと考えます。
公正証書で作成することにより、公証人が契約内容を精査するため、当事者のみで作成した場合に比べて、有効性がより確保されます。
また、弁護士を介さずに契約書を作成する方は、公証人が確認することで形式上の不備が少なくなります。
ただし、公正証書にしたからといって、すべての条項が有効になるわけではありませんので十分な検討が必要です。

夫婦関係を強固にするための準備

夫婦財産契約登記は、婚姻後の財産トラブルを未然に防ぎ、安心した結婚生活を送るための非常に有効な制度です。特に、事業を営む家庭や再婚家庭では、リスク管理や相続準備として大きな効果を発揮します。
婚姻前の準備として、ぜひ夫婦財産契約登記を検討してみてください。契約内容の決定や登記手続きについては、司法書士や弁護士に相談することでスムーズに進めることができます。

また、夫婦財産契約は判例の少なさによる課題があります。夫婦財産契約については、現在まで判例が非常に少ないため、有効性の判断が難しい条項もあります。そのため、契約の内容や形式については慎重に検討し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
夫婦財産契約は、まだ発展途上の制度といえますが、離婚や財産トラブルを防ぐ有効な手段として注目されつつあります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は夫婦財産契約登記について解説しました。
夫婦財産契約登記や会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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