はじめの事業年度を1年以上に設定してしまった場合の対応策
定款に規定した初年度の事業年度
会社設立に際して作成した定款に規定した「事業年度」の設定は税務・法務に直結するため、慎重に設計しなければなりません。
しかし、初年度の事業年度を「1年以上」としてしまうミスは意外と多く、税理士や税務署から修正が求められるケースがあります。
この記事では、実際に発生した事例をもとに、初年度の事業年度を1年以上に設定してしまった場合のリスクと解決策を明確に解説します。
さらに、長期的な視点からどのように修正すべきかを考察し、最適な対応策を提示します。
事業年度を1年以上に設定してしまうリスクとは?
1. 税法上の問題
税務上、事業年度は原則12か月以内であることが前提とされています。これを超えると、法人税や消費税の申告スケジュールにズレが生じ、税務署から修正を求められる可能性があります。
2. 会計処理の混乱
1年以上の事業年度を設定すると、収益や費用の期間配分が複雑になり、会計処理に混乱を招きます。特に、税務申告や決算書作成において、会計基準との整合性を取るのが難しくなります。
3. 長期的な運営への影響
2期目以降の事業年度との整合性が取れず、事業計画や運営が非効率になる可能性があります。設立後の成長期において、このような調整作業は企業の発展にとって大きな障害となります。
実際の事例と解決策
定款の内容
通常の事業年度:「毎年10月1日から翌年9月30日まで」
初年度:「会社成立の日(令和6年9月30日)から令和7年9月30日まで」
設立日:「令和6年9月30日」
一見すると問題ないように見えますが、初年度が1年と1日(366日)となり、税務署から修正を求められることになりました。
問題解決のための2つの選択肢
このような問題に直面した場合、解決策として以下の2つの方法が考えられます。
それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。
選択肢1:初年度を短縮する
初年度を「令和6年9月30日から令和7年8月31日まで」とし、11か月の期間に短縮します。
メリット:
税務署からの指摘を完全に回避。
2期目以降は「10月1日~翌年9月30日」と通常のスケジュールに戻せる。
デメリット:
初年度が短くなるため、売上や費用計上の期間が限定され、事業計画が修正を迫られる可能性があります。
選択肢2:三年目以降で整合性を取る
初年度を「令和6年9月30日~令和7年9月29日」と設定し、2期目を「令和7年9月30日~令和8年9月30日(13か月未満の調整期間として運用)」とする。3年目以降から「10月1日~翌年9月30日」に戻します。
・2期目:令和7年9月1日 ~ 令和8年9月30日(13か月未満の調整期間として運用)
・3期目以降:令和8年10月1日 ~ 翌年9月30日(通常の1年間)
メリット:
初年度の短縮が不要。
長期的には通常の事業年度スケジュールに戻せる。
デメリット:
2期目がやや特殊な期間になるため、経理や税務処理が一時的に複雑化。
最適な対応策:長期的視点で柔軟に修正
以下の方針が一般的に推奨されます。
・初年度を「12か月以内」に短縮する(例:令和7年8月31日まで)。
・必要に応じて定款に特例を明記する。
・修正後の事業年度スケジュールを税務署に届け出る(事業年度変更届を提出)。
教訓:事業年度設定時の注意点
・初年度は必ず12か月以内に設定する
設立日が9月30日であれば、初年度を翌年8月31日までとするのが一般的です。
・専門家に必ず相談すること
司法書士や税理士に確認することで、トラブルを未然に防げます。
手続きのご依頼・ご相談
初年度の事業年度設定ミスは、税務や会計に影響を及ぼします。
今回のケースのように、事業年度を1年以上に設定してしまった場合でも、適切な修正を行うことで問題を解消できます。
会社法人登記・商業登記に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。