法人手続

株式を保有する取締役が退任した場合に株式を回収する方法(共同経営者が出資し株式を持ち合う場合の注意点)

非公開会社において株式を保有する取締役が退任した場合の対応


無議決権株式へ変更

非公開会社において創業時役員となるものがみんなで出資して会社を設立し運営するケースは少なくありません。
取締役Aが普通株式を100株保有していたところ、やむを得ない事由によって取締役Aが退任することになり会社を離れることになった場合、他の株主に保有株式を譲渡して手放すという場合がほとんどです。
また、会社も退任する役員が保有する株式を回収したいと考えることもあると思います。
この時、株式の譲渡以外に、会社を離れたAが議決権の行使ができないように、無議決権株式に変更し、そのまま株式を保有させておくことも選択肢としては考えられます。この場合に必要とされる手続きは以下の通りです。

①取締役会の決議
②株主総会の決議
③種類株主総会の決議
④A、同種の株式を保有する他の取締役との合意
⑤登記申請



まず、取締役が提案者となった場合、取締役会で株主総会決議事項を決定した上で、株主総会において種類株式発行会社とする定款の一部変更に関する決議を特別決議によって行います。
ある種類の株式を無議決権株式とする場合は、定款に、「A種類株式を有する株主は株主総会において議決権を有さない」と定めます。この場合、無議決権株式にかかる種類株主総会を不要とする定款の定めも追加しておいた方が、後に不要な手続きを省くことができます。また、株式の内容を変更するにつき損害を及ぼす恐れのある種類株式がある場合は、当該種類株主総会が必要になります。
しかし、残余財産の優先順位が変更となるような定めがなければ、無議決権の定めに変更したとしても、他の種類株式に損害を及ぼす可能性は低い場合がほとんどです。
そして、現在議決権のある株式を議決権のない株式へ変更する場合は、当該株式の保有者と、同種類の株式を有する他の株主の同意を経なければなりません。これらすべての手続きが完了した上で、定款変更に伴う登記申請をします。定款変更は、効力発生日から2週間以内に登記申請しなければなりません。登録免許税は3万円となります。

合意がうまくいかない場合

上記のように、退任する取締役Aとの合意がうまくいけば、株式を回収したり、内容を変更したりすることで会社は目的を達成することが可能です。しかし、Aが合意をしなかった場合、会社が法的根拠なしに無理やりAの株式を取得することはできません。
しかし、会社法上の手続きを経ることで強制的に株式を取得できる可能性はあります。
まず、退任する取締役の株式が34%以内である場合、他の株主の協力を経てスクイーズアウトという少数株主を排除する方法によって回収することができます。スクイーズアウトをするには、全部取得条項付種類株式・株式併合・特別支配株主の株式等売渡請求権による3つの方法があります。

事前に株主間契約を締結しておく

万が一退任する取締役から株式が回収できなかった場合、会社の運営に大きな支障をきたしてしまう可能性があるので、株式を付与する前に条件を付す方法が一番無難な方法であるといえます。
具体的に、二つ方法があり、一つは、主要株主との間で株主関契約を締結し、取締役退任時に株式を回収できるようにしておくことです。次に、取得条項付種類株式を利用する方法です。これらの方法をうまく活用することによって、取締役退任時においても、株式を回収できないといった懸念は解消されます。

手続きのご依頼・ご相談

本日は退任した取締役から株式の取得が可能かについて解説しました。
取締役が株式を保有することでこれが大きなインセンティブとなるため、会社にとって大きなメリットをもたらします。
しかし、株式は、会社の運営に大きな影響を与えるものです。したがって、株式を保有する取締役が退任する可能性もあるので、株式を付与する前に、退任時にどうのように回収できるかを慎重に検討してから発行することをおすすめいたします。
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