民法基礎知識

解除と解約って何が違うの?効果や要件を解説



「解除」と「解約」法的効果

契約を終了させる根拠として「解約」と「解除」がある。一般的には、解除よりも、解約の方が耳にする事が多く、解約も解除も、結果的には既存の契約を解消するという言う意味では共通している。しかし、その効果や要件などはそれぞれ異なるので、ひとまとまりに契約を解消するものとして判断することはできない。では、解約と解除の相違点はいかなるものであるのか。
例えば、携帯電話を他の会社の乗り換えるために、今の契約を解約するとする。この場合、解約であれば、今までの契約全てがなかったと言う事にはならず、有効に成立した契約を解約をした日から将来に向かって解消するという効力を発することとなる。また、解約の申し入れをすることによって、当事者の話し合いの上で契約を終了させるのが解約であり、当事者双方の合意によって効力が生じる。
一方、法律で言う解除の効果は、解約とは異なってくる。解除の場合、遡って遡及的に契約を解消する事となり、その効果は遡及する。つまり、契約自体が最初から無かった事となる。また、不可抗力や相手方の重大な契約違反によって目的を達しえなくなった場合に、契約をしている当事者の一方が意思表示をする事によって効果が生じる。ゆえに、解除の場合は、当事者の一方による解除権が認められなければならない。さらに、民法における解除については、契約内容の内、まだ行われていない未履行の部分については双方共に履行をする義務を負わず、既に行われている既履行の部分については現状の回復をする義務を負う。したがって、原状回復が困難となれば、解除をした側からもう一方に対して損害賠償請求が発生する可能性もある。

賃貸借契約における例

では、アパートやマンション等を借りている場合の賃貸借契約ではどうであろうか。賃貸借契約においては、契約期間が設けられていることが多く、期間が満了していない間でも、賃貸借契約を終了させ契約を解消する場合がある。このような場合、賃貸借契約を解約するのか解除するのかでは、全く異なってくる。
まず、賃貸借契約の解約は、契約当事者双方には契約違反など契約の目的達成を妨げる要因が無いにも関わらず、一方当事者の都合による契約を終了させたいという意思のもと行われる。契約期間の定めのない解約においては、賃貸人からの解約の場合、正当な理由を有することが条件とされているが(借家借地法28条)、契約期間の定めがある契約においては、原則、契約期間中に契約を解約することは許されていない。しかし、「解約権保留特約」が付されている場合、正当な理由があれば、契約を解約することは可能となる。正当な理由とは、①建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、②建物の賃貸借に関する従前の経過、③建物の利用状況、④建物の現況、⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出などを考慮して判断される(借家借地法28条)。また、このような場合であっても、ただちの解約することは許されない。なぜなら、いきなり明渡請求を受けても賃借人は困てしまうので、賃貸人よりも弱い立場である賃借人を保護する目的で解約申入期間が義務付けられている。一般的な見解としては、賃貸人からの解約申入期間は借地借家法27条の適用により最低限6か月であると考えられている。それに対して、賃借人からの解約申入期間には、27条は適用されず、期間の制限はないと解するのが有力である。しかし、この場合、途中解約違約金が発生す可能性があるので注意が必要となる。

次に、賃貸借契約の解除は、契約解除するにあたって原因があり、それを理由とする解除でなければならない。まず、民法607条における賃貸人の賃借人に反する保存行為があげられる。次に、債務不履行による解除である。これは、賃貸人であれば目的物を使用させる義務を負い、賃借人であれば賃料を支払う義務を負う。しかし、どちらかの債務が不履行となれば、当事者の一方は解除権を行使することができる。さらに、無断転貸・無断賃借権譲渡や用途違反も契約解除の原因となりうる(民法612条2項・1項)。しかし、無断転貸であっても親族関係などの特殊な人間関係であったり、軽微な転貸であったり、背信行為であると認められなければ、解除は許されない可能性もある。解除が認められた場合、原則、違反を是正するよう相当の期間を定めて催告する必要があるが、判例では、当事者間の信頼関係が破壊された場合は、無催告解除が容認されている(最判昭27・4・25民集6・4・451)。

遡及するか否か

このように、賃貸借契約における解約と解除ではその効果や要件はおきくことなってくる。しかし、原則として解除の効果は遡及するのでその契約は始めから無かったこととなるのに対し(民法545条1項)、賃貸借契約の場合、その効果は遡及せず将来に向かってのみその効力を生ずる(民法620条)。なぜなら、長期にわたって継続していた賃貸借契約の場合、その賃料や使用収益を最初から清算するのは困難であるからだ。ゆえに、賃貸借契約であれば、解約でも解除でも将来に向かってのみその効力を発することとなる。

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