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成年後見制度とは?遺産分割協議で問題となるとき

成年後見制度とは?


成年後見制度

父親が亡くなり、母親と二人で遺産分割協議を行わなければならなくなったとして、母親が認知症であり、事理弁識能力を欠く場合であったとすると、話し合いによって遺産を分割するのは難しくなってしまいます。
このような場合、民法によって定められている「成年後見制度」によって解決することができる。
この制度は、認知症をはじめ、精神障害や知的障害など事理弁識能力を欠く者を保護する目的で定められています。
事理弁識能力を欠く状態とは、精神上の障害のため物事のよしあしを区別することの判断・行動ができない状態にあることをいう。
このような場合、自分で財布のお金を管理することはおろか、法律的な契約などすべてにおいて自分で判断することは難しくなってくる。ゆえに、後見開始の審判を受けた者を成年被後見人とし、これに成年後見人が付与される(民法8条)。後見開始の審判の請求をすることができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官であるとさだめられています(民法7条)。
したがって、自分の母親が認知症である場合、その子供は、家庭裁判所に後見開始の審判の請求をすることができます。

s成年後見人・補助人・被保佐人

成年後見制度は、成年被後見人を保護する目的で定められているため、日用品の購入その他日常生活に関する行為以外で、成年被後見人が単独で行った法律行為は、取り消すことができる(民法9条)。したがって、認知症の母親が後見開始の審判を受けた後に、その母親と娘二人だけで行った遺産分割協議は、取り消すことができる。また、二人の遺産分割協議で母親が発した意思にたいして、家庭裁判所が選任した成年後見人が同意をしたとしても、その法律行為は取消すことができます。
なぜなら、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く状況にあるので、法律行為をなすには法定代理による方法しかなく、成年後見人には同意権が付与されていない。それに対して、認知症が軽度であるために被補助人・被保佐人の認定を受け、家庭裁判所が補助人・保佐人を選任した場合は、原則代理権を持たず同意権のみが付与される。成年被後見人であるのか、被保佐人・被補助人であるのかの違いは、事理弁識能力を欠くのか、著しく不十分であるのかによって分けられる。ゆえに、被補助人・被保佐人であれば同意を得て自らが契約をし、成年被後見人であれば代理人によって法律行為を行うことになる。

遺産分割協議の場合

このように、例の場合であれば、母親が後見開始の審判を受けた後は、家庭裁判所が付与した成年後見人が法定代理人として遺産分割協議に参加することとなる。しかし、成年後見人が遺産分割協議に参加する場合は、法定相続分以上を確保することが原則となる。成年後見人は、本人の財産に対して善管注意義務という善良なる管理者の注意を払って管理しなければならない義務を負うため、細心の注意を払った遺産調査を怠り本人に不利益を生じさせた場合、不法行為責任が問われる可能性がある。ゆえに、成年後見人の傘下によって、法定相続分を考慮せず自由に遺産分割をすることは許されなくなる。

選任される成年後見人と利益相反

また、家庭裁判所によって選任される成年後見人には、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあるが、多くの場合は子供や兄弟などの親族が選任されることがほとんどである。例の場合であれば、母親が後見開始の審判を受け、娘が成年後見人に選任された場合、遺産分割協議をするうえで問題が生じてくる。なぜなら、相続人である母親の法定代理人は、同じく相続人である娘であり、結局のところ、遺産分割協議は娘が一人で判断することとなる。このような場合、自分の利益の最大化を図ろうとすれば、本人の利益を害してしまう可能性があるため、本人と法定代理人は利益相反関係となってしまう。法定代理人の行なった行為が、外形的・客観的に見て本人の利益を害する利益相反行為と認められた場合、その行為は無権代理行為となり無効となる(民法108条2項)。そこで、利益相反関係にない代理人を置くために、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要がある。また、後見監督人がいる場合は、後見監督人が代理人となって遺産分割協議に参加することもできる。

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成年後見制度とは?遺産分割協議で問題となるときについて解説しました。
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