【1分で分かる】株式ファンドで任意組合が選択される理由、各ファンド形態との違いと特徴
【株式ファンドは任意組合が主】各ファンド形態との違いと特徴【1分で分かる】
なぜ株式ファンドで任意組合が選択されるのか
日本の集団的投資スキーム(ファンド)には、任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、不動産特定共同事業等様々な形態があります。
これらのファンドの何を使うかは、そのファンドの投資対象や規模等によって選択することになるのですが、株式ファンドに関しては、従来任意組合が多く選択されてきました。
今から20年前位に有名であった、あの村上ファンドも最初は任意組合で組成されております。
ではなぜ株式ファンドで任意組合が選択されるのかを考えてみましょう。
任意組合の特徴
任意組合の特徴は以下になります。
2:任意組合の財産は各組合員の合有である。
3:任意組合の債務は各組合員が無限責任を負う。
4:任意組合の所得は、任意組合で課税されずに各組合員に分配され、各組合員は各々申告納付をする。
ここで株式ファンドで任意組合が選択される一番の大きな理由は、
「4:任意組合の所得は、任意組合で課税されずに各組合員に分配され、各組合員は各々申告納付をする。」にあります。
この申告形態は所謂「パススルー課税」と呼ばれます。任意組合は法人格を有せず、日本の税法上納税義務者ではありません(法人税法第4条)。
第四条 内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合又は第八十四条第一項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る。
2 公共法人は、前項の規定にかかわらず、法人税を納める義務がない。
3 外国法人は、第百三十八条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有するとき(人格のない社団等にあつては、当該国内源泉所得で収益事業から生ずるものを有するときに限る。)、法人課税信託の引受けを行うとき又は第百四十五条の三(外国法人に係る退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行うときは、この法律により、法人税を納める義務がある。
4 個人は、法人課税信託の引受けを行うときは、この法律により、法人税を納める義務がある。
したがって、任意組合は所得があったとしても任意組合として納税することは出来ません。
仮に法人税申告書を任意組合として作成して提出しても、税務署から「この申告書間違っているため受理できません。」と冷ややかに連絡が来るだけです。
任意組合が納税できないのであれば、この任意組合で生じた所得について税金はかからないのでは?と喜ぶ人がいるかもしれませんが、日本の税法はそのような抜け穴はちゃんと塞いでいます。
任意組合で生じた所得に関しては、税務上各組合員を納税義務者とするように規定し、各組合員に帰属する所得を各組合員が納税するように規定されています(法人税基本通達14-1-1)。
14-1-1 任意組合等において営まれる事業(以下14-1-2までにおいて「組合事業」という。)から生ずる利益金額又は損失金額については、各組合員に直接帰属することに留意する。
(注) 任意組合等とは、民法第667条第1項に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう。
上記のとおり任意組合では各組合員が納税義務者となり、各組合員が税金を申告納付することになりますが、これだけだと株式ファンドが任意組合で組成される理由にはなりません。
その理由は一言でいうと、株式による所得に関して税務上の恩恵を受けることができることになります。株式による税務上の恩恵として、最初に上げられることは、個人の株式譲渡所得の申告分離課税があります。
これは、個人に関する株式の売却益に対しては他の所得とは分離し一定の税率(20%程度)課税される制度です。個人の所得税は最高税率が45%であることに対して、その半分以下で済む点が非常に優位になります。
仮に1億円株式売買益が生じた場合、申告分離課税であれば2,000万円程度の税金で済むのに、一般の総合課税であると4,000万円程度の税金が課せられるからです。任意組合のパススルー課税では、個人に分配された株式売却益相当の所得は申告分離課税の適用が可能になります。次にあげられる税務上の恩恵は、法人に関する配当金の益金不算入制度があります。法人の受領する受取配当金に関して、原則として所得には算入しない制度で、結果的に受取配当金には法人税がかからないことになります。
任意組合のパススルー課税では、法人に分配された受取配当金相当の所得は受取配当金の益金不算入の適用が可能となります。
株式ファンドで任意組合が選択される理由
株式ファンドで任意組合が選択される理由は主に以下になります。
・個人組合員は株式売買益の申告分離課税の恩恵を受けれる。
・法人組合員は受取配当金の益金不算入の恩恵を受けれる。
また任意組合は上記税務上の理由の他に組成が容易にできるというメリットも有するため現在も使用されています。
まとめ
本日は、株式ファンドで任意組合が選択される理由について簡単に解説いたしました。
ファンド組成をご検討中の方、ご相談をご希望の方は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。