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生前贈与制度と相続発生後の手続きをわかりやすく解説

【終活】生前贈与制度と相続発生後の手続きをわかりやすく解説



「終活」という言葉がマスコミでも多く取り上げられるようになりました。
自身でも万が一に備えて就活を始めたいという方も多いのではないでしょうか。
でもいざ「終活」と思っても、何から手を付けたら良いのか具体的にどうしたらいいのかわからないですよね。
この記事では、生前から備えておきたい対策から、相続発生後の手続きまでを、わかりやすく解説していきます。

相続の生前にできる5つの対策を解説

まずは実際に相続が発生する前、生前に取れる主な対策5つを解説していきます。

対策その1・相続時精算課税制度

相続時精算課税制度の狙いは『若い世代へ資産を移転し経済を活性化させる』ことです。
この制度を利用して贈与を行えば、2500万円までの贈与財産については贈与税がかからなくなります。
その代わり、財産をあげた方が将来亡くなった時、贈与した額を「相続財産」と合計して相続税を計算することになります。

相続時精算課税制度を利用するには、次の要件に当てはまる必要があるので注意しましょう。

・贈与する方が贈与した年の1月1日現在で60歳以上であること
・財産を受け取る方は、贈与する方の直系卑属である推定相続人、または孫。贈与を受けた年の1つ1日現在で20歳以上の方。



相続時精算課税制度は、上手に活用できれば大きな節税効果がありますが、ケースによっては多額の相続税を支払うことにもつながります。
この制度を利用する場合、専門家へ一度相談することをおすすめします。

対策その2・暦年贈与と連年贈与

暦年贈与は相続税対策の王道ともいえます。
毎年110万円までは贈与税がかからないという制度はご存じの方も多いはず。
この制度を「暦年贈与」と言います。
長期間にわたって暦年贈与を行う事で節税効果が期待できます。
しかしこれが「連年贈与」あるいは「定期贈与」とみなされてしまうと、贈与税がかかってしまうので要注意。
「連年贈与・定期贈与」とみなされないための工夫をご紹介します。

1・贈与契約書を作成する:贈与を行った証拠を残すために贈与契約書を作成しましょう。

2・現金ではなく受贈者名義の銀行へ振り込む:よく「子どもへ贈与したけど無駄遣いされると困るので親が通帳と印鑑を管理している」というケースがあります。しかし、これでは口座が単に親が子どもの名義を借りて預金しただけの「名義預金」とみなされ税務調査で問題になることが…。できるだけ受贈者が口座を管理できるようにしておきといいでしょう。

3・111万円贈与して贈与税の申告をする
連年贈与とみなされないための方法として「毎年非課税110万振り込む」のではなく「あえて111万円振り込んで贈与税を申告する」といった方法も有効です。111万円贈与した場合、1万円が贈与税の対象となり、1000円納税することになります。


対策その3・おしどり贈与(夫婦間贈与)の特例

おしどり贈与とは「贈与税の配偶者控除」という特例の通称です。
「婚姻期間が20年以上」の夫婦に適用されます。
この特例は「居住用不動産」もしくは「それを取得するための金銭の贈与」が行われた場合、最高2000万円まで控除できるという仕組みです。
おしどり贈与を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

① 夫婦の婚姻関係が20年を過ぎていること
② 贈与された財産が居住用不動産、またはその取得金額である事
③ 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産に住んでおり、今後も住み続けること



おしどり贈与をすべきかどうかの判断は、贈与を行う目的によって変わります。
節税目的でおしどり贈与を利用したい場合、税金がどれくらいかかるのか計算して、本当に節税になるかシミュレーションしなくてはなりません。
「うちの場合は節税効果がある?」「二次相続まで視野に入れて節税対策したい」と心配な場合は、専門家へ一度相談しましょう。

対策その4・住宅取得資金の特例

住宅を購入するさい、両親や祖父母から資金提供を受ける方は多いものです。
住宅資金贈与の非課税の特例を利用すると、資金贈与に伴う税金の負担を抑えられますよ。
住宅取得資金の特例は、父母・祖父母からの直系尊属から資金提供をうけて住宅を新築・相築した場合贈与税が一定額まで非課税になる制度です。
期間が2015年から2021年12月31日までに提供された資金のみですのでご注意を。
非課税限度額は、新築等をする住宅の家屋種類によって違います。500万円~最大3000万円にもなります。
ただし住宅取得資金の特例を受けてしまうと、「小規模宅地等の特例」が受けられなくなるのでご注意を。
制度の内容が複雑なので、住宅取得資金の特例制度を利用したい方は専門家へ相談してみてもいいでしょう。

対策その5・負担付死因贈与契約

贈与をする方が、贈与を受ける方と何らかの義務・負担をしてもらう約束をして贈与を行う制度です。
例えば「土地や建物を贈与するので、残りの住宅ローンを返済してほしい」「不動産を贈与するかわりに、同居して面倒をみてもらいたい」といったケースが多くなっています。
遺言書よりも実行度合いが強く、成年後見制度より自由度が高いため使い勝手の良い制度です。
トラブルを防ぐためにも「何を贈与するのか」と「何を負担してもらうのか」は明確にし、公正証書を利用することをおすすめします。

相続発生後の手続きは?代表的なもの5つを解説

いつかは起こるとわかってはいても、いざ直面すると呆然としてしまう方も多い相続。親が元気なうちに、相続手続きの流れを知っておきましょう。

不動産名義変更

相続財産の名義変更は「遺産分割協議」終了後に行います。
実家の家や土地を相続する場合には、土地と建物の所有権移転登記が必要です。
相続登記には書類が必要になりますが、相続の状況によって必要な書類が異なりますので、早めに揃えておく事をおすすめします。
またよくあるトラブルとして「登記されていない不動産だった」「不動産が担保に入っていた」などがあります。
相続が発生する前から、こうした事がないか確認しておきましょう。

生命保険の請求

保険証書に記載されている連絡先に連絡をとりましょう。基本的にはコールセンターへ連絡をとるか、オンラインで手続きができます。
生命保険金を請求するさいに必要な書類としては一般的に以下のようなものがあげられます。

・保険金請求書
・保険証券
・死亡診断書
・被相続人の確認書類



生命保険金の請求期限は3年となっています。期限が過ぎてから保険証券が出てきた…といった事にならないよう、普段から整理しておく事をおすすめします。

預貯金の解約、名義変更

相続が発生すると、故人の銀行口座は凍結されます。
凍結された口座から預金を引き出す場合は、名義変更や解約払い戻しの手続きが必要です。
預金の解約や払い戻し、名義変更の手続きには必要な書類が多く、銀行ごとに支店へ何度か出向く必要があります。
そのため多くの時間と労力を費やす事になるので覚悟が必要です。
親が元気なうちに、なるべく銀行をまとめてもらうといいでしょう。
現在は相続による預貯金の解約や払い戻し、名義変更の手続きを代行してくれる専門家もいるので心配な場合は相談してみてもいいでしょう。

株式の名義変更

遺産分割協議を経て、株式を相続した相続人は証券会社や信託銀行などに、その旨を届け出て名義書換の手続きを行う事になります。
生命保険の手続きと一般的には同じです。
証券会社や信託銀行へ連絡をとり、相続が発生した旨を伝えると必要な書類が送られてきますので、必要事項を記載し、必要書類を添付します。
一般的に株式の名義書換に必要とされる書類は以下のようなものです。

・相続による株式名義書換請求書
・遺産分割協議書または共同相続人の同意書
・相続人の印鑑証明書
・相続人の戸籍謄本



相続人が一人であれば株式をそのまま相続するのに問題ありません。ですが、相続人が複数人いる場合「遺産分割」が必要になるので要注意。
株式を誰かがそのまま受け継ぐ「現物分割」、株式を売却して相続人で分配する「換価分割」、一人が株式を相続し代償金を他の相続人が受け取る「大商分割」の3つの方法があります。
元気なうちに、株式を売却して現金化してしまうのも「終活」ではよくみられます。

遺族年金の受給

遺族年金の受給資格は「故人に生計を維持されていた子どものいる配偶者および子ども」です。
遺族年金には大きくわけて2種類あるので覚えておきましょう。

① 遺族基礎年金:国民年金の加入者が受け取る年金
② 遺族厚生年金:厚生年金加入者(会社員の方)の遺族が受け取る年金



保険料が未納、または滞納中」の場合、遺族年金は受け取れないので気をつけてください。
また公的年金は「1人1年金の原則」があります。複数の年金の受給資格に当てはまった場合、どちらか一方を選択しなければなりません。
例えば「自身の老齢年金」と「遺族厚生年金」の受給資格に該当する場合、どちらか多い方を受給することになります。

まとめ

「相続にむけて終活を始めたい」そう思ってみても、実際に行動に移すとなると、何から手を付けたらいいのかわからず、尻込みしてしまうものです。
また、生前にできる相続税対策にしても、相続が発生した後の諸所の手続きにしても複雑で、たいへんな労力を費やすものです…。
相続や終活を検討している場合、それが本当に節税になるか、二次相続で子どもや孫が苦労しないか、心配であれば専門家へ一度相談することをおすすめします。
専門家による適格なシミュレーションとアドバイスがあれば「手続きしておくべきこと」と「しなくてもよいこと」がわかり、自分自身も、相続する側にとっても安心につながりますよ。

いかがでしたでしょうか。生前対策・遺言相続・遺産承継に関するご相談は永田町司法書士事務所までお気軽にお問い合わせください。

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