【前編】特定目的会社(TMK)とは?その特徴、利用目的、設立方法などを簡単解説。匿名組合とは何が違う?
投資組合をつくるために利用する
投資組合をつくるのに、「特定目的会社」を利用するケースが増えています。
特定目的会社(TMK)とはなんでしょうか。
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【中編】特定目的会社(TMK)とは?資金調達の種類、投資家保護機能とは。大きな特徴を簡単解説
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【後編】特定目的会社(TMK)とは?パススルー課税の要件を解説
不動産の証券化等に活用
特定目的会社(TMK)とは「資産の流動化に関する法律」に基づいて設立される特別な法人です。不動産の証券化等に活用され、一種のペーパーカンパニーであります。そのため特定目的会社(TMK)は、資産の処分とともに解散されます。
特定目的会社(TMK)は、設立後、「資産の流動化に関する法律」に基づき監督官庁の許可を得て初めて、組合財産を購入しし運用利益を投資家に分配する等の業務を開始することができます。
後でご紹介いたしますが。特定目的会社(TMK)を設立し投資家を募ったとしても、金融取引商品取引業者としての登録は必要ないことが大きな特徴です。
デメリット
しかし、デメリットも当然存在します。
それは特定目的会社(TMK)は①設立するまでに時間がかかります。また②コストも他の組合に比べて高くなります。
①特定目的会社(TMK)を設立し、業務開始届出書とこれに係る資産流動化計画を作成し監督官庁に提出し許可を受けるまでにかかる期間は不備なくスムーズに進んで平均2カ月程かかります。
②また、特定目的会社(TMK)の場合、特別な法人であるため公認会計士や弁護士等の専門家の介入を必要とします。
具体的には、法律上、公認会計士による監査が必須とされ、資産流動化計画には弁護士の意見書や不動産がある場合は不動産鑑定士の評価証明書を付ける必要があります。
後に資産流動化計画に変更があった場合、都度監督官庁に届け出をする必要があります。しかし、それでも特定目的会社(TMK)を利用する理由はあるんです。
メリット
特定目的会社(TMK)は、不動産や債権だけでなくほぼすべての資産・財産に投資することが可能です。一部、匿名組合や任意組合などに出資できないものもありますが、法律に列挙されたもの以外は問題なく投資が可能です。そして最大のメリットは下記の3つです。
金融免許が無くても投資家を募集できる
特定目的会社(TMK)が発行する金融商品取引上の有価証券を「優先出資証券」といいます。この優先出資証券は一定の期間を定め監督官庁の許可を得れば誰でも投資家を募ることが出来ます。優先出資証券は、株券と同じですが、金融商品取引業者としての登録を必要としません。
業法規則が存在しない
通常、事業として不動産の売買をする場合は、宅地建物取引業者として登録をしなければなりませんが、特定目的会社(TMK)は、宅地建物取引業としての登録をせずに不動産売買をしたとしても違法とはなりません。
そして、投資家より集めたお金で現物の不動産へ投資しても、不動産特定共同事業法(※)の規制も受けません。
(※)不動産特定共同事業法とは、投資組合を作って現物の不動産に投資しようとする管理者を規制した法律
パススルー課税
不動産の登録免許税、不動産取得税、指名債権取得における質権、抵当権移転の登録免許税がやすくなります。また一定の要件を満たすことにより配当を経費とすることができ、投資家が余分な税金を支払うことがありません。他の投資組合と同じくパススルー課税を実現することが出来ます。
特定目的会社と匿名組合の比較
特定目的会社と匿名組合の比較(メリットとデメリット)を下記に掲載いたしました。
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匿名組合とは?投資組合との違い、利用用途やメリットデメリットを解説
特定目的会社(TMK) | 匿名組合 |
【メリット】 ・誰でも投資家を募集できる ・金融商品取引業者の登録不要 ・不動産や債権に関する税金が安くなる ・パススルー課税(配当は経費) |
【メリット】 ・自由な条件設定 ・募集人数に制約が原則ない ・短時間で安くつくれる ・パススルー課税(配当は経費) |
【デメリット】 ・設立まで時間がかかる(平均2カ月) ・専門家を入れる必要があるためコストがかかる。 ・資産流動化計画が必要 ・募集人数に制約がある。 |
【デメリット】 ・匿名組合としての登記はできない ・税金が安くなる等の特例はなし ・金融商品取引業者の登録が必要 |
さいごに
いかがでしたでしょうか。本日は特定目的会社(TMK)についてご紹介いたしました。
特定目的会社や組合、LLP(有限責任事業組合)の設立等に関するご相談は、永田町司法書士事務所までお気軽にお問い合わせください。
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・匿名組合とは?投資組合との違い、利用用途やメリットデメリットを解説
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