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賃借権を相続することは出来るのか -法務担当者向け基礎知識-

賃借権の相続

アパートやマンションなどを借りて住んでいる契約者が亡くなられた場合、残された家族はそのままそのアパートやマンションで生活を続けることができるのでしょうか?
アパートやマンションを借りて住むという契約を賃貸借契約といい、借りる側からいうと賃借権という権利になります。では、賃貸借契約の当事者である父親が亡くなった場合に、その奥さんや子供がその部屋を借りて住む権利(賃借権)を相続することができるかどうか。

実は、この賃借権も相続の対象となります。

したがって、契約者が亡くなったから賃借権がなくなるということはなく、奥さんや子供は父親の賃借権を相続し、その部屋にそのまま住み続けることができます。

相続と遺贈

被相続人の権利が相続開始によって移転するのは、相続による場合と、遺贈による場合の2通りに分かれます。

相続

まず、相続による場合としては、特定の相続人にアパートやマンションの賃借権を相続する旨の遺言(遺産分割方法の指定といいます。)された場合、その遺言によって賃借権を相続することとなった方が新しいアパートの借主となります。相続人は、被相続人の権利義務を取得することになるので、父が契約していた内容と同じ内容で、賃借権を引き継ぐ事になります。遺言書がなく、相続人が複数いて共同で相続することになった場合(法定相続といいます。)には、その相続人全員が賃借権を相続することになり、父が契約していた内容と同じ内容で引き継ぐことになります。ちなみに、賃借権が相続された場合、貸主である大家さんに借主変更の承諾を得る必要はありません。ここが大変重要なポイントとなります。

遺贈

それでは、遺贈の場合はどうでしょうか?
遺贈について簡単に説明します。亡くなられた方(被相続人)は遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人にも相続財産を取得させることが出来ます。このことを「遺贈」といいます。遺贈には相続財産のうちの特定の財産を取得させる特定遺贈と、相続財産を割合で取得させる包括遺贈とがあります。包括遺贈の場合は、遺贈を受けた人(包括受遺者といいます。)は、法定相続人と同一の権利義務を取得することになるので、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産をも取得することになります。民法990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」としています。そこで賃借権についても、包括遺贈であれば、大家さんの承諾を得なくても賃借権を引き継ぐことができると解されています。

一方、特定遺贈の場合、このアパートの賃借権をあげるというイメージになります。
この場合、賃借権につき特定遺贈を受けた人が借主となり、借主の変更となるため賃貸人(大家さん)の承諾を得る必要が発生します。
例えば、婚姻届を提出していない内縁関係の夫婦の場合、お互いに法定相続人にはなりませんが、相手方に包括遺贈するとしておけば大家さんの承諾を得ずとも、また、現在住んでいるアパートの賃借権を遺贈するとしておけば、残された方が、大家さんの承諾を得ることによって、そのままアパートに住むことができるというわけです。

さいごに

いかがでしたでしょうか。相続に関するご相談は、あさなぎ司法書士事務所までお問い合わせください。

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