代表取締役が辞任し、会社が動かない場合、判決による辞任登記の可否と代表権の帰属をどう整理するか
辞任したのに会社が登記してくれない
会社に辞任届を提出した。しかし、会社は変更登記をしない。
このとき辞任した取締役はどう動くべきか。
さらに問題が深刻なのは、辞任者が代表取締役であった場合です。
会社の代表者が空白になるからです。
本稿では、
・判決による辞任登記の可否
・代表取締役辞任後の代表権の帰属
・判決主文の射程
・添付書類の実務整理
という4つの視点から整理します。

商業登記法に明文がないのに、なぜ可能なのか
商業登記法には、不動産登記法のような「判決による登記」の規定はありません。
それでも実務では、
・会社が登記を怠っている場合
・登記請求権を有する者が
・「登記手続をせよ」との給付判決を得たとき
確定判決により申請意思が擬制され、会社を代理して申請できると解されています。
これは先例および裁判例で認められている整理で、辞任登記についても同様に扱われています。
辞任登記請求の理論的根拠
辞任により委任契約は終了します。それにもかかわらず登記が残れば、登記簿は事実と一致しません。
登記請求権の根拠については、
・委任契約終了に基づく整理
・登記法規に基づく公法上の義務
・条理
という複数の説明が示されています。
いずれに立つにせよ、実務上は辞任した取締役の登記請求は認められているという点が重要です。
問題は、代表取締役が辞任した場合
通常の取締役辞任であれば、論点は比較的単純です。
しかし代表取締役が辞任すると、会社の代表者が不在になり、代表権付与の登記が必要になる可能性があるという追加論点が生じます。
定款規定が持つ決定的意味
前提として、次のような定款規定がある会社を想定します。
「取締役の互選により代表取締役1名を置く」
このタイプの規定は、取締役が1名のみとなった場合、その者が当然に代表権を有すると解されています。
つまり、
代表取締役A辞任
↓
取締役がBのみとなる
↓
Bが当然に代表権を取得する
という法的構造になります。
ここで重要なのは、代表権の帰属が選任行為ではなく、定款に基づく法的効果である点です。
判決主文の射程はどこまで及ぶか
辞任登記請求訴訟の主文は通常、
「原告が取締役及び代表取締役を辞任した旨の変更登記手続をせよ」となります。
ここで問題になります。
判決主文に「Bを代表取締役とする変更登記をせよ」という文言がなくても、代表権付与登記まで申請できるのか。
実務上は次のように整理されています。
・判決により会社の申請意思は擬制される
・代表権付与は定款に基づく法的効果である
・したがって、辞任登記の当然の帰結として代表権帰属の登記が問題となる
ただし、登記官の審査は形式審査に限られます。
そのため、
・判決理由中に代表権帰属の前提事実が記載されていること
・定款を添付すること
が実務上は重要になります。
申請実務の整理
代表取締役が辞任したケースでは、登記の事由は「取締役及び代表取締役の変更」となります。
登記すべき事項は、
・取締役A 辞任
・代表取締役A 辞任
・代表取締役B 代表権付与
という構成になります。
添付書類としては、
・判決謄本
・判決確定証明書
・定款
・(代理申請の場合)委任状
が想定されます。
実務上の安全策
代表権付与まで申請できるか否かは、事案の設計次第で結論が左右され得ます。
そのため、
・訴訟提起前に法務局へ事前照会する
・判決理由中に代表権帰属の前提事実を明示してもらう
という対応が、実務上は望ましいといえます。
結論
判決による辞任登記は可能です。
問題は、代表取締役辞任後の代表権の扱いです。
・定款規定の解釈
・判決主文の射程
・判決理由の記載内容
・登記官の形式審査
これらを総合的に設計することが必要です。
単に「辞任したから訴えればよい」という話ではなく、登記を見据えた訴訟設計が不可欠です。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、代表取締役が辞任し、会社が動かない場合、判決による辞任登記の可否と代表権の帰属をどう整理するかについて解説しました。
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