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上場会社が取締役会で新株予約権を発行したら公告が必要になる?振替法161条2項の見落とし

上場会社が取締役会決議で新株予約権発行を発行

上場会社が取締役会決議で募集新株予約権を発行する場合、実務では会社法240条2項に基づき「株主への通知で足りる」と理解されている場面が少なくありません。
しかし、本当にそれで足りるのでしょうか。


会社法240条2項の構造

会社法240条2項は、公開会社が取締役会で募集新株予約権の募集事項を決定した場合、当該募集事項を株主に通知しなければならないと定めています。
つまり本体は「通知義務」です。

(公開会社における募集事項の決定の特則)
第240条
1 第238条第3項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第2項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
2 公開会社は、前項の規定により読み替えて適用する第238条第2項の取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。


振替株式発行会社という前提

ここで重要なのが、上場会社は振替株式発行会社であるという点です。
上場会社の株式はすべて振替制度の下で管理されています。

振替法161条2項の意味

株式等の振替に関する法律161条2項は、会社法240条2項の通知について、振替株式発行会社にあっては公告により行うと規定しています。
ここで明確に通知は排除され、公告に置き換えられていることがわかります。

(適用除外等)
第161条 振替株式については、会社法第122条第1項から第3項まで、第132条第1項第2号及び第3号、第2項並びに第3項、第133条、第147条第1項、第148条、第152条並びに第154条の2第1項から第3項までの規定は、適用しない。
2 会社法第116条第3項、第158条第1項、第168条第2項、第169条第3項、第170条第3項、第172条第2項、第179条の4第1項、第179条の6第4項、第181条第1項、第195条第2項、第201条第3項、第206条の2第1項、第240条第2項、第244条の2第1項、第469条第3項、第776条第2項、第783条第5項、第785条第3項、第797条第3項、第804条第4項、第806条第3項及び第816条の6第3項の規定にかかわらず、振替株式を発行している会社は、これらの規定による通知(当該振替株式の株主又はその登録株式質権者に対してするものに限る。)に代えて、当該通知をすべき事項を公告しなければならない。

株式等の振替に関する法律161条2項は、会社法240条2項の通知を排除しています。
つまり、上場会社が取締役会決議で新株予約権発行を発行した場合、「社債、株式等の振替に関する法律第161条第2項」により公告をしなければならないとされます。

よくある誤解

実務では、
・株主名簿管理人がいる
・株主総会招集通知は出している
・TDnetで開示している といった理由から、「通知で足りる」と考えられがちです。
しかし振替法161条2項は、上述のとおり、通知という方法自体を排除していますので、開示で代替する、という構造ではありません。

結論

上場会社が、公開会社であり、取締役会決議により募集新株予約権を発行する場合、240条2項が適用される限り、振替法161条2項により公告が必要となるのが条文上の帰結です。
「通知で足りる」という理解は、振替法の存在を見落としている可能性があります。

実務家としての視点

条文を形式的に読むか、慣行に従うか。この論点は、上場会社の機関設計と振替制度を理解しているかどうかで分かれます。
少なくとも、「通知で足りる」と即断するのは手続きを厳格に進められないリスクがあるため、振替法161条2項の存在を前提に、一度立ち止まって検討すべき論点です。

また、日本公告調査会社のサイトにおいても、以下ご案内がございますので、ご確認ください。
参考:https://www.n-koukoku.com/0150%20download/koukokukikannrei.pdf

手続きのご依頼・ご相談

本日は、上場会社が取締役会で新株予約権を発行したら公告が必要になるのかについて解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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