共同相続で株式を共有した場合、議決権は誰が行使するのか?
株式の相続が発生した場合の実務
相続が発生し、被相続人が保有していた株式を複数の相続人が承継することは珍しくありません。
しかし、遺産分割が未了のまま株式が「共有」状態となった場合、株主としての権利はどのように行使されるのでしょうか。
本稿では、判例の枠組みに基づき、共同相続と株主権行使の実務を整理します。

相続により株式が共有となるとはどういう状態か
株式は相続開始と同時に法定相続分に応じて共同相続人の共有となります。
この状態は、いわゆる民法上の共有(準共有)と整理されています。
もっとも、株主権は会社との関係で外部的に一体として行使される性質を持つため、共有状態のままでは議決権の扱いが問題となります。
権利行使者の指定は全員一致が必要か?
結論、持分価格の過半数で決定できます。
会社法106条本文にいう「株主の権利を行使すべき者」の決定方法については、共有者全員の同意を要するとの見解も有力に主張されていました(江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』125頁参照)。
これに対し、最高裁は、当該指定行為を共有物の管理行為と捉え、持分割合に応じた過半数で決することができると判断しました(最判平成9年1月28日)。
つまり、株式の準共有者が権利行使者を定める場合、持分割合に応じた過半数で決することができます。
実務ポイント
| 判断方法 | 必要か |
|---|---|
| 全員一致 | 不要 |
| 持分価格の過半数 | 足りる |
「相続人全員の実印が必要」と誤解しているケースも見られますが、判例上は過半数で足ります。
選定された者は自由に議決権を行使できるのか
権利行使者として1名が指定され、会社に通知された場合、その者は共有者間に意見の相違があっても自己の判断で議決権を行使できます。
この点を明確にしたのが、最高裁昭和53年4月14日判決 です。
実務整理
・選定は内部多数決
・議決権行使は選定者の単独判断
つまり、会社は内部対立を考慮する必要はありません。
権利行使者を定めていない場合の議決権
この点については、最高裁平成11年12月14日判決 が重要です。
判例は、
権利行使者の指定および通知を欠く場合、共有者全員が共同して行使する場合を除き、会社は議決権行使を認めることはできない
としています。
つまり以下のとおりになります。
| 状況 | 議決権行使 |
|---|---|
| 指定あり | 指定者が単独行使 |
| 指定なし+全員共同 | 行使可能 |
| 指定なし+一部のみ | 不可 |
総会運営に直結する重要論点です。
指定されていない相続人は総会決議を争えるか
最高裁平成2年12月4日判決 は、株主総会決議不存在確認の訴えの原告適格について、
株主の権利を行使すべき者として定められた者に限られると判示しました。
したがって、指定されていない共同相続人は、原則として株主としての原告適格を有しません。
会社としては、誰が株主として扱われるかを正確に把握する必要があります。
未成年の相続人がいる場合は利益相反になるか
この論点を扱ったのが、最高裁昭和52年11月8日判決 です。
親権者が未成年者を代理して権利行使者を定め、その者を自らとした場合でも、利益相反行為には当たらないとされています。
実務上、特別代理人選任は不要です。
実務で問題になりやすい場面
① 遺産分割未了のまま総会が開催されるケース
→ 権利行使者の指定と通知の有無を必ず確認。
② 相続人間で対立しているケース
→ 会社は内部事情に立ち入らない。形式的適法性で判断。
③ 中小企業で株式が経営権に直結するケース
→ 事前に定款や相続対策を検討することが重要。
本コラムのまとめ
共同相続による株式共有は、
・民法上の共有理論
・会社法上の株主権行使
・訴訟法上の原告適格
が交錯する領域です。
「共有=全員一致」と短絡的に処理すると、株主総会の適法性や訴訟対応に重大な影響を与えます。
相続発生時点で、権利行使者の指定と通知をどう整理するか。
これが、商業登記実務・会社運営双方にとって極めて重要なポイントです。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、共同相続で株式を共有した場合、議決権は誰が行使するのか?について解説しました。
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