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事業年度変更と会計監査人の自動再任、どこまで自動再任となるのか

事業年度変更と会計監査人

本日は、事業年度の変更(とくに延長)を行ったときの会計監査人の任期と“自動再任”の可否を整理します。
焦点は、次の2ケースで退任時期がどう決まるかと、その後の再任手続が要るかです。

① 事業年度を変更した“後”に会計監査人を選任(重任)したケース
② 会計監査人を選任(重任)した“後”に事業年度を変更したケース


法務省の整理

① 事業年度変更 → 監査人選任(重任)
変更後の事業年度の終了までを任せる前提で選任している。
→ 選任後1年を超えても、当該事業年度に関する定時総会の終結時に退任。

② 監査人選任(重任) → 事業年度変更
選任時にはその新しい期間の終了まで任せていないことになる。
→ 選任後1年以内に事業年度が終了しないなら、定款変更の効力発生時点で退任。

どちらも「任期伸長はできない」原則の下での調整です。

「自動再任」はどこまで働くか

会計監査人は自動再任制度がありますが、このようなケースの場合どうなるのでしょうか?法務局へ問い合わせたところ下記回答をいただきました。

①は自動再任が働く(そのまま定時総会で再任みなし)。
②は自動再任が働かないため、新たな選任決議と就任承諾が必要

以前の別事例では、「選任決議のみ要、就任承諾は不要」の取扱いがあったが、今回は不可との回答です。
感覚的には②でも自動再任を認めたいところだが、変更のタイミング差で結論が分かれるのが実務。
ただし、実務上②はほとんど生じにくい(臨時総会を開ける規模・構成の会社に偏る)ため、影響は限定的といえると思います。

実務への落とし込み

・延長メリットの現実性
事業年度を延ばして定時総会を1回省略したいニーズは、多くは上場会社等。
これらは定時総会で定款変更するのが通常で、①型に当たり、自動再任で回る。

・②型を避ける運用
臨時総会を開ける規模の会社が、わざわざ延長しても税務申告は省略不可。
②の設定自体が少ない。
→ 監査人リスクが気になるなら、定時総会で定款変更(=①化)で足並みを揃える。

本コラムのまとめ

・①(事業年度変更→監査人選任):自動再任OK。
・②(監査人選任→事業年度変更):自動再任NG、新たな選任決議+就任承諾が必要。
・影響は限定的だが、②を避けたいなら定時総会で定款変更して①の態に整えるのが堅実。

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本日は、事業年度変更と会計監査人の自動再任、どこまで自動再任となるのかについて解説しました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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