解散・清算と新株予約権の関係、抹消登記は必要か?
新株予約権と解散・清算の関係
解散や清算結了の登記を進める際、会社が新株予約権を発行していた場合に、そのまま清算結了登記ができるのかという論点は、実務上しばしば迷うところです。
特に「すでに行使期間が満了している新株予約権」については、抹消登記が必須か否かが明確でないケースも多く見られます。
行使期間満了後の新株予約権、抹消登記は不要か?
会社が発行した新株予約権がすべて行使期間満了となっている場合、その新株予約権は法的には当然に消滅します。
したがって、「新株予約権が行使期間満了により消滅していることが登記上も明らかであれば、清算結了登記を受理する」という運用が、少なくとも東京法務局では採られていると報告されています。
つまり、次のようなケースでは抹消登記を省略して清算結了登記が可能とされます。
・行使期間がすべて満了しており、
・登記簿上も行使期間の満了が明記されていて、
・行使がなされていないことが明らかである場合
もっとも、「実際に行使がなかったこと」までは登記簿上からは確認できないため、実務家の中には「行使していないことを明確にするために抹消登記をすべき」との慎重論もあります。
行使された可能性がある場合のリスクと確認
新株予約権が行使期間中に一部行使されていた場合、
・発行済株式数が変動しているはずであり、
・残余財産の分配額(1株あたり)にも影響します。
そのため、清算結了時には、登記簿上の発行済株式総数と決算報告書上の株式総数に相違がないかを確認する必要があります。
もし相違があれば、清算結了登記の前に株式数変更登記(新株予約権行使による増加)を経る必要があります。
実務上の整理、東京法務局の取扱い例
東京法務局の運用例では、次のような結論が示されています。
・行使期間満了による新株予約権の抹消登記は不要。
・ただし、行使があった場合には変更登記が必要。
このため、清算結了登記前に以下を確認することが重要です。
1.新株予約権の行使期間満了日
2.実際の行使有無(株式数の増減確認)
3.登記簿上の新株予約権情報が消滅を明示しているか
管轄による取扱い差と留意点
あくまでも本件は法務局によって判断が分かれる領域です。
同じ「新株予約権行使期間満了」でも、ある法務局では抹消登記を求め、別の法務局では不要とされるケースがあります。
背景には、「清算結了登記の前提として全ての権利関係を消滅させる必要がある」とする厳格運用(いわば「株式譲渡承認機関変更と同理」)と、「形式上消滅が明らかであれば足りる」とする簡素運用の違いがあります。
したがって、案件ごとに所轄法務局へ事前照会を行うのが実務的に最も確実です。
実務上のまとめ
論点 | 実務取扱いの要旨 |
---|---|
行使期間満了の新株予約権 | 抹消登記不要(管轄により異なる) |
行使があった場合 | 変更登記が必要 |
経過措置(会社法施行前発行) | 状況により6か月内登記または省略可 |
清算結了登記との関係 | 残存権利・登記事項の消滅が明示されていることが条件 |
判断困難な場合 | 事前照会が最も確実 |
本コラムの結論
・行使期間満了による消滅が明らかであれば、抹消登記は省略可能とするのが東京実務。
・ただし、管轄差が存在するため、必ず法務局への事前確認を経た上で申請することが望ましい。
清算登記は最終局面であるがゆえに、登記官の判断も慎重です。
「要らないですよ」と言われることが会社にとって有利であっても、本当にそれで正しいかという観点から、専門家として一歩踏み込んだ確認を怠らないことが大切です。
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本日は、解散・清算と新株予約権の関係、抹消登記は必要なのかについて解説いたしました。
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