監査等委員会設置会社への移行登記をどう組むか、役員枠・原因の書き方・定款変更の整理
監査等委員会設置会社への移行登記
会社法改正により選択肢として導入された「監査等委員会設置会社」ですが、上場会社を中心に移行事例が増えています。
従来の監査役会設置会社から移行する場合には、定款変更に伴い役員構成が大きく変わるため、登記事項の整理を誤ると補正に直結します。
本稿では、具体的な事例をもとに「登記すべき事項」「添付書類」の構成を示し、実務で注意すべき論点をまとめます。
制度移行に伴う基本整理
監査等委員会設置会社への移行では、以下がポイントとなります。
・監査役・監査役会は廃止(会社法327条4項、335条3項)。
・監査等委員会を新設し、3名以上の取締役を委員として選任(過半数は社外取締役)。
・取締役は「委員」と「委員以外」に区分。任期規定も分ける必要がある。
・重要な業務執行の決定の取締役への委任の定め(会社法399条の13第6項)を定款に設けるケースが多い。登記事項となる。
・監査役の責任免除規定は附則で残すのが一般的。ただし、登記は「本則削除=抹消」とし、附則部分は登記不要。
登記すべき事項の具体例
以下は、移行登記の事例をもとに整理したものです。
(原因年月日は例として「令和7年9月1日」としています。)
・取締役A/B/C:令和7年9月1日重任
・取締役D:令和7年9月1日退任
・取締役・監査等委員D(社外):令和7年9月1日就任
・取締役・監査等委員E:令和7年9月1日就任
・取締役・監査等委員F(社外):令和7年9月1日就任
・取締役・監査等委員G(社外):令和7年9月1日就任
・代表取締役A(住所記載あり):令和7年9月1日重任
・監査役E/F/G:令和7年9月1日退任
・会計監査人(○○監査法人):令和7年9月1日重任
・非業務執行取締役等の責任限定規定:令和7年9月1日変更
・監査役設置会社の定め:令和7年9月1日廃止
・監査役会設置会社の定め:令和7年9月1日廃止
・監査等委員会設置会社の定め:令和7年9月1日設定
・重要な業務執行の決定の取締役への委任に関する定め:令和7年9月1日設定
ポイント
・Dの取扱い:従前の取締役としては「退任」→新たに「取締役・監査等委員として就任」。重任ではない。
・責任免除規定:監査役の責任免除は附則に残しても登記不要。本則削除=登記上は「変更」として処理。
・委任の定め:登記事項として抽象的に「重要な業務執行の決定を取締役に委任する旨の定款の定めがある」と記載する。
添付書類(例)
・株主総会議事録(定款変更案を合綴したもの)
・取締役会議事録
・就任承諾書(新任扱いのE・F・G)
・本人確認証明書(新任扱いのE・F・G)
・代表取締役の就任承諾を証する書面(議事録援用可)
・会計監査人の登記事項証明書(省略可、会社法人等番号を記載)
・登記手続委任状
実務上の注意点
1.役員の原因の書き方
「取締役→監査等委員付取締役」は「退任+就任」。重任としない。
2.一括申請
「監査役設置会社の定めの廃止」「監査役会設置会社の定めの廃止」「監査等委員会設置会社の定めの設定」はまとめて申請。
3.責任免除規定の扱い
本則削除=変更登記、附則部分は登記不要。
4.補正リスク
「株主リスト」や本人確認証明書の要否を見落とすと補正対象となる。
特に「委員」と「委員以外」を混在させないことが重要。
本コラムのまとめ
監査等委員会設置会社への移行登記は、取締役と監査等委員付取締役を別枠で扱うこと、責任免除規定を本則削除=登記抹消とすること、委任の定めを抽象記載することが肝要です。
登記事項の組み立てや添付書類を正確に準備すれば、補正リスクを減らしスムーズな登記申請が可能となります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、監査等委員会設置会社への移行登記をどう組むか、役員枠・原因の書き方・定款変更の整理について解説いたしました。
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