事業年度変更時に押さえておきたい実務上のポイント解説
事業年度変更に伴う実務上の注意点
企業活動の中で、事業年度(決算期)の変更が必要になる場面があります。この手続きは一見シンプルに見えるものの、注意すべきポイントが複数存在します。本稿では、事業年度変更に伴う実務上の注意点をわかりやすく解説します。
変更の基本手続き
事業年度の変更には、株主総会での特別決議を経て、定款変更を行う必要があります。事業年度は登記事項ではないため、変更登記は不要です。基本的には株主総会決議のみで完結するシンプルな手続きです。
ただし、後述するように、役員の任期に影響を与える場合があります。この場合、役員の再任やそれに伴う登記手続きが必要となるため注意が必要です。
役員任期への影響と注意点
取締役や監査役の任期については、定款で「選任後〇年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」と定められることが一般的です。そのため、事業年度を変更することで、既存の役員の任期が予定外に終了する可能性があります。
具体例として、事業年度を変更した結果、変更後の定款に基づいて任期がすでに満了しているとみなされる場合、その役員は退任することとなります。この点は検討漏れが発生しやすいため、特に注意が必要です。
また、任期が1年程度と短い会計監査人については、任期満了に伴い退任となるケースが発生しやすい点に留意してください。会計監査人が定時株主総会で再任される際の「みなし再任」(会社法第338条第2項)は、任期短縮に伴う退任には適用されません。そのため、新たに選任および登記手続きが必要となる場合があります。
経過措置と事業年度の設定に関する注意
事業年度を変更する場合、次期事業年度に至るまでの経過措置を定めることがあります。この際、会社計算規則では、事業年度が1年6か月を超えてはならないとされています(会社計算規則第59条第2項)。
一方、法人税法では事業年度は1年以内であることが求められるため、税務上の観点から1年を超える事業年度を設定しないケースが多いようです。このような設定については、会計や税務の専門家と十分に相談しながら検討を進めることが推奨されます。
税務上のリスクへの対応
事業年度変更は税務上の観点からも慎重な対応が求められます。一部の会社形態では、事業年度が1年を超える場合に税法上の要件を満たせず、優遇措置を受けられなくなるリスクがあります(租税特別措置法施行令第39条の32の2第4項)。
例えば、特定目的会社(SPC)などでは、会計期間の延長により導管性要件が崩れる可能性があります。税務上の問題がないかどうか、事前に専門家の助言を仰ぐことが必要です。
手続きのご依頼・ご相談
事業年度の変更手続きは一見単純ですが、役員任期や税務面での影響を考慮しなければなりません。
慎重な事前準備と専門家の協力を得ることで、変更をスムーズに進められるようになります。この記事を参考に、手続きに役立てていただければ幸いです。
本日は、事業年度変更時に押さえておきたい実務上のポイントについて解説しました。
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