法人登記の目的区に付す「小見出し」とは何か?根拠法ごとの相違を整理(商業登記)
法人登記の小見出し
法人登記の「目的区」には、「目的」「目的及び業務」「目的及び事業」「事業」等の小見出しを付します。
どれを用いるかは、各法人の根拠法や登記事項の定め方によって異なります。登記記録の“枠題”は共通して「目的等」ですが、何を登記しているかを示すタイトルとして小見出しが必要になります。
なぜ「小見出し」が必要か
・会社と異なり、法人の登記は原則として各種法人等登記規則に基づく運用です(同規則別表の“目的区”は「目的、業務、事業又は設置する施設の名称」を登記事項とする枠組み)。
・このため、実際に登記される内容(目的/業務/事業/施設名)を明示する必要があり、「小見出し」で示します。
・なお、一般社団・一般財団は「一般社団法人等登記規則」により目的のみを登記しますが、記録の枠統一の都合上、形式的に「目的」と小見出しを付す運用です。
共通ルールとズレが生じる理由
・組合等登記令2条2項1号は設立登記の登記事項として「目的及び業務」を例示しますが、各法人の根拠法で目的・業務・事業の記載方法が異なるため、小見出しも法人ごとに変わります。
・また、登記記録例が一元的に公開されていないため、先例や法務省の記載例、書籍の記載に表記ユレが生じ得ます(後述のNPO・社会福祉参照)。
法人別「小見出し」早見表
法人種別 | 小見出し | 根拠・補足(元ブログに基づく要点) |
---|---|---|
一般社団・一般財団 | 目的 | 一般社団法人等登記規則により目的のみ登記。枠題は「目的等」だが**形式的に「目的」**を付す。 |
特定非営利活動法人(NPO) | 目的及び事業(※) | 法務省HPの見本で「目的及び業務」と見える箇所がある一方、書式精義等では「目的及び事業」。特定非営利活動促進法11条は「その行う特定非営利活動の種類」および「事業の種類」の記載を要請。※「目的及び事業」が妥当と考えられるが断定は控える**旨の整理。 |
社会福祉法人 | (小見出しなし) | 社会福祉法31条が目的・事業等を定める。平成29年2月23日民商第29号通知の登記記録例に小見出しがない。旧い記載例では「目的/事業」や実務上「事業」と見える例もあり。 |
医療法人 | 目的及び業務 | 医療法44条2項(目的 等)+42条の2(社会医療法人の収益業務)。これらを踏まえ小見出しは**「目的及び業務」。 |
学校法人 | 目的及び業務 + 設置する私立学校等の名称 | 私立学校法30条。組合等登記令2条2項6号・各種法人等登記規則2条別表により、「設置する私立学校(専修・各種学校を含む)の名称」も目的区に登記。 |
管理組合法人 | 目的及び業務 | 区分所有法3条の「建物等の管理を行う団体」に由来。対象不動産を具体的に記載し、「上記建物ならびにその敷地及び附属施設の管理」等の書きぶりで目的と業務を包含させる実務イメージ。 |
農事組合法人 | 事業 | 農協法72条の4が法人の目的を法律上明示 → 目的は登記不要、登記は「事業」。同72条の10に事業列挙(共同利用施設、農業経営、附帯事業等)。 |
事業協同組合 | 事業 | 中小企業等協同組合法84条(設立登記の登記事項)で「事業」が明示。したがって小見出しは「事業」。あわせて中小企業団体の組織に関する法律3条・4条で位置付け(事業協同組合等/同法から中小企業等協同組合法へ)。 |
実務メモ
・NPOは「業務」ではなく「事業」の表記が整合的と考えられるが、公的見本間で揺れが見られるため、採る書式の典拠を確認しておくと無難です。
・社会福祉法人は先例の登記記録例に小見出しがなく、旧来の記載例・現行の証明書見え方に差があり得ます。先例に従う運用を前提に、申請段階での表記整合に注意します。
・学校法人は「目的及び業務」+設置学校名までが目的区に載る点が特徴です。
・管理組合法人は定款が存在しないことから、目的と業務の書きぶり(管理対象物件の明示)がポイントになります。
・「登記記録例」の一括公開がなく、法務省記載例/先例/書籍に差異があり得るため、最新の取扱い(先例)に照らして運用を合わせる必要があります。
本コラムのまとめ
・小見出しは「何を登記しているか」を示すタイトルであり、根拠法・登記事項の設計に連動します。
・実務では、組合等登記令の一般ルール(目的及び業務)を軸にしつつ、個別法の書き分け(NPO=事業、学校=設置学校名、社会福祉=小見出しなし、農事組合法人=事業 等)を外さないことが肝心です。
・表記ユレが指摘される類型(NPO・社会福祉)は、先例や採用書式の典拠を踏まえて一貫性を確保します。
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法人登記の目的区に付す「小見出し」とは何か?について解説いたしました。
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