債権者保護手続と効力発生日・準備金の残し方編
債権者保護手続きの要否
資本準備金の減少手続は、目的によって債権者保護手続きが必要かどうかが変わります。
欠損填補のために行う場合
→ 債権者保護手続きは不要。
その他の目的(剰余金の配当原資を増やすなど)
→ 債権者保護手続きが必要。
この違いは減資との大きな差であり、準備金減少の特徴です。
効力発生日の設計
資本準備金を減少する決議では、効力発生日をどう設定するかが重要です。
減少額が欠損額以内の場合
→ 債権者保護手続きが不要なので、株主総会決議と同時に効力発生。
減少額が欠損額を超える場合
→ 債権者保護手続きが必要となり、公告・催告を経て効力発生。
そこで、議案を分けて「欠損額の範囲内」と「それを超える部分」に分割すれば、一部は即日効力発生、一部は債権者保護手続後に効力発生、という柔軟なスケジュール設計も可能です。
定時株主総会と債権者保護手続き
定時株主総会で決議する場合
その後に債権者保護手続を開始するなら、総会翌日以降に決算公告を行う必要があります。
総会前に債権者保護手続を開始している場合
その決算公告は前期分として扱われます。
公告時期の扱いを誤ると効力発生日のスケジュールに影響するため、慎重に調整する必要があります。
資本準備金と利益準備金、どちらを残すか?
資本準備金と利益準備金を両方減少させるケースもあります。
このとき問題となるのは、積立限度額をどちらの準備金として残すか。
税理士の実務感覚では、配当原資としては利益剰余金が望ましいため、利益準備金を多く減らし、資本準備金を残す方が有利とされる場合があります。
本コラムのまとめ
・資本準備金減少の債権者保護手続は「欠損填補かどうか」で要否が分かれる。
・効力発生日は、決議と同時に発生させる方法と、債権者保護手続完了後に発生させる方法を使い分ける。
・定時総会との関係では、公告時期に注意が必要。
・複数の準備金を減少させる場合、どちらを残すかも検討課題となる。
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債権者保護手続と効力発生日・準備金の残し方編について解説いたしました。
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