減資

欠損填補と損失処理の違い・期中変動の扱い

欠損填補と損失処理はどう違うのか?

資本準備金を減少させるとき、よく混同されるのが「欠損填補」と「損失処理」です。

欠損填補
・資本準備金を取り崩して「その他資本剰余金」に振り替えること。
・この段階では「利益剰余金の赤字(マイナス)」は解消されません。

損失処理
・剰余金の処分により「その他資本剰余金」から「その他利益剰余金」に振り替えること。
・ここで初めて赤字が消えます。

ポイント
「資本準備金を崩すだけでは赤字は消えない。損失処理まで行って初めて赤字がゼロになる。」

決議の場面ごとの扱い

定時株主総会の場合
損失処理(=剰余金の処分)まで同時に決議することが多い。

臨時株主総会の場合
とりあえず欠損填補だけ決議し、損失処理は定時総会に回すケースがよく見られる。

期中変動と臨時決算の限界

資本準備金や資本金の減少は期中でも反映されます。
その結果、剰余金も期中に増加することになります。

一方で、損失処理については「期末のその他利益剰余金」を基準に行うのが原則です。

・期中で赤字が出るたびに損失処理をしてしまうと、資本剰余金と利益剰余金が混同する恐れがある。
・そのため、臨時決算で赤字が増えても、期中の数値を基準に損失処理を行うことはできません。

臨時決算はあくまで「分配可能額を算定する」ためのものであり、損失処理の基準とはならないのです。

準備金をどの程度残すか?

資本準備金を全額崩すことも理屈上は可能ですが、実務では 積立限度額(資本金の4分の1) を残すのが一般的です。
そうしないと、将来配当を行った際に、再び準備金を積み立てなければならなくなるからです。

債権者保護手続の要否と効力発生日

欠損填補に充てる場合
債権者保護手続は不要。

それ以外の場合
債権者保護手続が必要。

また、効力発生日の設計によっては、
・決議と同時に効力を発生させられるケース
・決議を分けて、一部は即時効力、一部は債権者保護手続後に効力発生

といった方法を選択できます。
なお、「資本金」を減少する場合は、必ず債権者保護手続きを要します。

本コラムのまとめ

・欠損填補と損失処理は異なる。赤字解消には損失処理が不可欠。
・定時総会では損失処理まで、臨時総会では欠損填補のみとする実務が多い。
・損失処理は期末基準で判断し、期中数値ではできない。
・準備金は積立限度額を残すのが実務上安心。
・欠損填補の場合は債権者保護手続が不要。効力発生日の設定方法も工夫できる。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、欠損填補と損失処理の違い・期中変動の扱いついて解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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