発行要項の変更と決議機関の要否、取締役会決議で足りるのか?
新株予約権の発行要項の変更手続
新株予約権や募集株式の発行にあたり、会社は「発行要項」を決定します。
その後、事情の変更や実務上の必要に応じて、発行要項を修正するケースも少なくありません。
では、この「発行要項の変更」を行う場合、どの決議機関で決定すれば足りるのでしょうか。
発行要項の決定機関
発行要項は、会社法に基づき、次の機関で決定されます。
・株主総会決議:原則。募集事項の決定は株主総会の特別決議を要します(会社法199条、238条)。
・取締役会決議:公開会社の場合、又は、非公開会社において株主総会決議で「募集事項の決定を取締役会に委任する」旨を決めた場合には、取締役会が発行要項を決定します。
発行要項変更の決議機関
発行要項を変更する場合、原則として「当初の発行を決議した機関」が変更の権限を持つと解されています。
・株主総会で発行を決議した場合 → 株主総会で変更を決議
・取締役会で発行を決議した場合 → 取締役会で変更を決議
(※株主総会で取締役会に委任決議して取締役会で決定した内容を変更する場合も変更の決議機関は、取締役会と解されている)
したがって、当初取締役会で発行要項を決定しているのであれば、変更も取締役会決議で足ります。
例外・株主総会決議が必要となる場合
ただし、常に取締役会だけで済むわけではありません。
次の場合には、株主総会の承認が必要となります。
1.特に有利な条件変更
会社法239条2項により、株主以外の者に特に有利な条件で新株予約権等を発行する場合には、株主総会の特別決議が必要です。
→ 例えば、新株予約権の行使価額を大幅に引き下げるなど。
2.定款記載事項に関わる場合
発行可能株式総数を超えるなど、定款変更を要する場合は株主総会決議が必要です。
3.新株予約権者の同意が必要な場合
新株予約権の内容変更が新株予約権者に不利益を及ぼす場合には、その同意が必要です(会社法第290条類推適用の議論あり)。
実務上の留意点
不利益性の判断
変更が「新株予約権者に不利益となるか」「株主以外に特に有利な条件となるか」は、実務で最も判断に迷う点です。安全を期するなら株主総会決議や新株予約権者の同意を取得しておくのが望ましい場合もあります。
登記との関係
発行要項の変更内容が登記事項に及ぶ場合(例:払込金額、行使期間、取得条項等)には、変更登記が必要です。一方で、行使請求方法など登記不要な部分の変更であれば、登記は伴いません。
本コラムのまとめ
・発行要項の変更は、発行を決定した機関(株主総会または取締役会)が決議するのが原則です。
・当初、取締役会で発行を決めたのであれば、変更も取締役会決議で足ります。
・ただし、不利益変更・特に有利発行・定款記載事項に関わる場合などでは、株主総会決議や新株予約権者の同意が必要になる可能性があります。
発行要項の変更は、会社法・金融商品取引法の両面から適時開示や訂正届出書提出などの開示規制とも密接に関連するため、実務では安全サイドの判断が求められます。
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本日は、発行要項の変更と決議機関の要否、取締役会決議で足りるのか?について解説いたしました。
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