減資

いわゆる100%減資とは?会社再建スキームとしての活用方法

いわゆる100%減資

「100%減資」という言葉は会社法上の用語ではなく、実務で用いられる総称です。
債務超過に陥った会社が、既存株主に責任を求めつつ、新しい出資者を迎えて再出発するために行うスキームの一つです。

100%減資の典型的な手続き

一般的には以下の流れで実行されます。

1.既存株主から株式をすべて取得し、株主に退場してもらう
2.資本金を欠損填補に充て、資本金を0円にする
3.取得した株式を消却する
4.新しい出資者から出資を受け、新株式を発行する

こうして既存株主を整理し、会社は新たな出資者のもとで再建を図ります。

減資や自己株式消却は必須か?

減資(資本金を0円にする)は、欠損填補の手段として用いられますが、必須ではありません。
出資者による追加出資や、再生手続による負債免除で欠損が解消できる場合には、減資は不要です。

株式の消却も必須ではありません。
会社法上、資本金と発行済株式数は独立して扱われるため、取得した自己株式を消却せず、新しい株主への交付に使うことも可能です。

なぜ既存株主を排除するのか?

既存株主の存続を認めるかどうかは理論的には自由ですが、実務上は新しい出資者や債権者がそれを望まないのが通常です。
理由は、株主にも債務超過の責任を負ってもらうべきと考えられることや、新株主にとって議決権が希釈されることを避けたいといった事情です。

全部取得条項付種類株式を使う方法

平成26年改正会社法により、全部取得条項付種類株式を使って同様の効果を得る方法が可能となりました。

・定款を変更し、種類株式を追加(例:残余財産配当劣後株式)
・既存の普通株式を全部取得条項付種類株式に変更
・株主総会特別決議で会社がそれらを取得
・新株主に募集株式を発行、または取得した自己株式を交付
・最後に普通株式へと戻すための定款変更

この方法を使うと、減資や株式消却を必ずしも行わずに済みます。

費用面での留意点

減資を伴う場合は債権者保護手続が必要となり、公告から終了まで約1.5か月を要します。公告費用や個別催告費用も発生します。
減資と増資を同時に行うと、登録免許税は資本増加額ではなく「ゼロから増加した金額」に対して課されるため、負担が大きくなります。
一方で、取得した自己株式をそのまま新株主に交付すれば、資本金の増減を伴わずに再建スキームを実現でき、登録免許税を抑えることができると解されています。

本コラムのまとめ

・「100%減資」とは、株主の交代と会社再建を目的とした実務上のスキーム。
・減資や株式消却は必須ではなく、再建方法や債権者・新株主の意向で選択される。
・全部取得条項付種類株式を使えば、減資や消却を伴わずに同様の効果を得られる。
・費用・期間の面では、債権者保護手続や登録免許税への影響に注意が必要。

手続きのご依頼・ご相談

いわゆる100%減資とは?会社再建スキームとしての活用方法について解説いたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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