種類株式

自己株式は種類変更できるのか?実務上の論点整理

自己株式を種類変更する必要はあるか?疑問が生じる実務上の背景

通常、株式の種類変更は総株主の同意を前提に行われ、従業員株主の持株などを無議決権株式に切り替える場面などで活用されます。
ここで問題となるのが、自己株式についても種類を変更できるのかという点です。一見すると、自己株式をわざわざ種類変更する必要はないように思われます。
なぜなら、新株発行によって目的の種類株式を創設することができるからです。

今回の自己株式の種類変更という発想は、理屈の世界から出てきたものではなく、実際の案件での要望から生じました。
ある会社で、従業員株主が保有する普通株式を無議決権株式に変更するスキームを検討した際、会社が保有する自己株式も“ついでに”変更できないかという希望が出されました。
この自己株式を将来どう使うかは未定であり、活用の予定があるわけではありませんでした。

しかし、
・従業員向けの持株制度
・ストックオプションやインセンティブとしての活用
など、今後の利用場面を想定すると、種類を揃えておいた方が使いやすいのではないかという実務的な発想から「自己株式も変更対象にできるのか?」という疑問が浮かびました。

否定的な見解

否定的な立場では、次のように整理されます。
・自己株式には株主が存在しないため、同意を与える主体がない
・株式の種類変更は総株主の同意を前提とするが、自己株式ではそれを満たせない
・新株発行により必要な種類株式を創設すれば目的は達せられるので、自己株式に例外的取扱いを認める必要はない

この立場では、自己株式の種類変更は「制度上想定されていない」として否定されます。

肯定的な見解

一方で肯定的な見解では、次のように考えます。

・法律上「禁止する」との明文規定は存在しない
・株主全員の同意があるならば、自己株式についても種類変更を認めても差し支えない
・将来の利用に備える合理的ニーズがある以上、柔軟に認めるべき

この場合、「株主全員の同意」によって自己株式も種類変更できる余地があると整理されます。

実務対応と法務局の見解

実務上は判断が分かれるものの、法務局に照会した事例では、
「できない理由がないので、登記申請があれば受理する」との回答がありました。

ただし、制度的にはグレーゾーンであるため、
①安全策としては、新株を発行して対応する
②チャレンジする場合は、管轄法務局と事前に相談し、自己責任で申請する
という二段構えの対応が現実的です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、自己株式は種類変更できるのか?実務上の論点整理をいたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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