取締役の就任承諾はいつ?代表取締役と同時にできる?
取締役の就任承諾と代表取締役の就任承諾を同時に行えるか?
ある中小企業の法務担当者から、こんな相談を受けました。
「株主総会で新任取締役を選任したうえで、すぐに取締役会で代表取締役を選びたいと思っています。ただ、取締役の就任承諾と代表取締役の就任承諾って、同時に行っていいんですか?」
代表取締役に選ばれる者は、当然その前提として取締役でなければならないことは、会社法上明らかです。
では、同じ株主総会や同じタイミングで、取締役と代表取締役の就任を同時に承諾することは可能なのでしょうか?実務では見落とされがちな論点です。
取締役・代表取締役の就任承諾のタイミング
結論から言えば、取締役と代表取締役の就任承諾を「同時に」行うことは、会社法の建前上グレーな面があり、慎重な対応が求められます。
代表取締役の選定は、原則として「すでに取締役に就任している者」の中から選ぶ必要があります。つまり、「取締役に就任する」ことが先行していなければ、代表取締役の選定自体が無効になる可能性があるのです。
そのため、実務では以下のような順序で処理することが望ましいとされています。
1.株主総会で取締役を選任
2.取締役としての就任承諾をする(意思表示・書面)
3.取締役会で代表取締役を選定
4.代表取締役としての就任承諾をする
実際の現場では、時間的には“ほぼ同時”に処理されていても、書面上はこの順序が守られているかがポイントになります。
1枚の就任承諾書で済ませていいのか?
この問題に関連してよくあるのが、「取締役と代表取締役の就任承諾を1枚の書面にまとめていいか」という質問です。
理論的には、別々の就任行為であるため、2枚の書面に分けるのが確実です。
実務上、株主総会で選任された直後に開かれた取締役会に同一人物が出席し、その場で就任承諾をしているという前提であれば、1枚の承諾書に「取締役として、また代表取締役として就任する」旨を記載することも可能ではあります。
ただし、登記実務や法務局の判断によっては補正の対象になる可能性もあるため、分けておく方が安全です。
実務のアドバイスと注意点
上記を踏まえ、実務対応としては次のようなポイントを守るとよいでしょう。
・株主総会議事録には「就任承諾の意思表示があったこと」を明確に記載
・代表取締役の選定は、必ず取締役の就任承諾後に行う
・就任承諾書は、原則として取締役・代表取締役それぞれ分けて作成
どちらも議事録に出席し、自署を伴う場合、援用で済むケースもあり
このように、細かな論点ではありますが、実は登記の補正や会社機関の適法性に関わる重要な問題です。「就任承諾は、いつ・どのように?」という原則を、あらためて確認しておきましょう。
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本日は、取締役の就任承諾はいつ?代表取締役と同時にできる?という論点を解説しました。
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