監査役の任期が取締役とズレてしまったとき、どう調整すべきか?辞任による「任期合わせ」の可否と実務上の注意
任期がズレる「あるある」ケースとは?
中小企業の役員改選実務では、「取締役と監査役の任期がズレてしまう」という事態がしばしば発生します。
例えば、取締役は定時株主総会ごとに改選しているのに対し、監査役の任期が3~4年となっており、単独で満了する年が出てくるケースです。
こうしたズレが起きると、改選期がバラバラになり、監査役の任期管理が煩雑になるほか、余計な登記費用もかかります。
そこで実務では、監査役をいったん辞任させて、取締役と同時に再任することで「任期を合わせる」手法が用いられることがあります。
そもそも「辞任による任期合わせ」は有効なのか?
結論から言えば、有効です。
監査役自身が辞任の意思表示をし、それを受けて株主総会で再任決議が行われれば、形式上は一度任期を終了させたうえで、新たな任期をスタートさせることが可能です。
ただし、注意すべきは次の点です。
・辞任後の再任が確実視されていたとしても、辞任意思と就任意思は分離して取り扱う必要がある
・「辞任→再任」の手続きが適切でない場合、辞任の効力が否定され、任期が延びていなかったとされるリスクもある
したがって、書類上はあくまで一旦辞任した上で、株主総会で正式に再任されたという形を明確に記録しなければなりません。
実務的な書類作成と対応のポイント
監査役の辞任および再任に関して、次のような構成で書類を整えるのが望ましいとされています。
・辞任届:取締役改選が予定されている株主総会の終結時点で辞任する旨を記載
・株主総会議事録:監査役の辞任を確認したうえで、当該監査役を後任として再任決議する旨を明記
・就任承諾書:議事録援用ができない場合は、別途取得
実務上は、辞任届を出すタイミングと、株主総会での再任決議の前後関係に注意が必要です。
再任を前提とした「辞任撤回」と誤解されないよう、株主総会の議事録や通知文書に一貫性を持たせることが重要です。
実務家としての視点 ― 本当に任期合わせは必要か?
任期合わせはあくまで「事務の簡素化」を目的とした措置です。
任期のズレを許容したままでも、法的に問題があるわけではありません。
むしろ、監査役の独立性や緊張感の観点からは、取締役と改選期がズレていることに意義を見出すこともできます。
したがって、登記手続の手間・費用と任期管理の簡便さとのバランスを考慮した上で、任期合わせを行うか否かを判断すべきです。
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本日は、監査役の任期が取締役とズレてしまったとき、どう調整すべきか?について解説しました。
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