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外国人役員の本人確認証明書に必要な書類とは?署名証明書・宣誓供述書の違いと注意点

外国人役員就任時の「本人確認証明書」とは何か?

外国籍の人物が日本の株式会社・合同会社等の役員に就任する場合、就任承諾書に添付すべき「本人確認証明書」の扱いが日本人とは異なります。
日本人であれば、住民票や印鑑証明書、運転免許証の写し等が本人確認資料となりますが、海外在住の外国人については、日本国内の住民登録がないため、これらの資料は取得できません。

そのため、外国人の本人確認においては、以下のような外国書類を使うのが一般的です。

・パスポート(住所記載がある国もある)
・外国の運転免許証(住所記載があるか国による)
・在外公館が発行する在留証明書
・サイン証明書(署名証明書)
・宣誓供述書(Affidavit)

法務局への登記申請に際しては、これらのうち「氏名・住所・生年月日」の情報が明確に記載され、かつ本人のものであることを証明できる資料を添付する必要があります。

特に「サイン証明書」や「宣誓供述書」は、日本に住民登録のない外国人役員にとって、実務上欠かせない証明書類です。
ただし、それぞれに取得要件・認証方法・使用上の注意点があり、誤ると補正や却下のリスクを伴います。次に具体的にその違いと使い分けの実務を解説していきます。

サイン証明書と宣誓供述書の違いとは?—実務での使い分け方

外国籍の役員が本人確認書類として提出するもののうち、実務で最も多く登場するのが「サイン証明書(署名証明書)」と「宣誓供述書(Affidavit)」です。
一見似たように扱われがちですが、これらは目的と証明内容が異なります。

書類名 証明の内容 認証機関 特徴
サイン証明書 「署名が本人のものである」ことを証明 公証人または日本の領事館 原則として本人が出頭し署名が必要
宣誓供述書 記載内容が「本人の意思による真実である」こと 公証人または日本の領事館 内容は自由記載/代理人による取得も可能

たとえば、サイン証明書は「この署名が確かに本人の筆跡である」ことに主眼が置かれています。書面上の氏名や住所の記載がないことも多く、単体では本人確認資料として不十分とされるケースもあります。

一方、宣誓供述書は「私は確かに○○に居住する○○であり、○○の内容に誤りがないことを宣誓します」といった形で、本人の属性情報を明示したうえで内容に対して責任を負う書面です。署名そのものではなく、「記載内容に対する誓約」が証明されるという点で性質が異なります。
そのため、法務局により「サイン証明書では住所・氏名・生年月日が確認できないため、補完資料が必要」とされることがあり、在留証明書や翻訳付きの住所証明等を併用する場面がしばしば見られます。

宣誓供述書を選ぶ理由と、代理取得の可否に関する実務判断

登記実務では、「サイン証明書より宣誓供述書の方が便利」とされることがあります。その背景にあるのが、認証手続の柔軟性です。
サイン証明書は、原則として本人が公証人(または領事館)に出頭して、その場で署名を行い、認証を受けなければなりません。
一方で、宣誓供述書は、「宣誓の趣旨が明らかであること」「署名があること」を前提として、代理人による認証手続が可能な国もあるため、本人が多忙で現地に赴けない場合に重宝されるケースがあります。

たとえば、以下のような実務ニーズが背景にあります。

・多国籍企業の本国役員が頻繁に海外を移動しており、認証のための一時帰国が困難
・日本側の実務担当者が書類作成を担い、本人の事前承諾のうえで代理人が認証対応を希望
・サイン証明書が取得困難(本人が非識字、または公証人の出頭予約に時間がかかる)

ただし、代理認証が可能かどうかは、公証制度の国ごとの解釈や、領事館の運用ルールに依存するため、必ずしもどの国でも認められるとは限りません。
また、たとえ認証が受けられたとしても、法務局側が「本人による意思確認がなされていない」として補正を求めることもあるため、事前の確認が極めて重要です。

このように、利便性が高い一方で、代理取得の可否や登記実務での取り扱いに揺らぎがあるのが、宣誓供述書を用いる際の注意点といえるでしょう。

「住所のない署名証明書」は補正対象?補完資料の用意が肝要

外国の公証制度に基づいて発行される署名証明書(サイン証明書)では、住所や生年月日といった個人識別情報がまったく記載されていないことがよくあります。
特に英語圏では、証明内容が「この署名は本人のものである」に限定されている書式が一般的です。

このような場合、登記申請書に添付した署名証明書だけでは「本人確認証明書」としての要件を満たさないとして、法務局から補正指示を受けることがあります。
実務対応としては、以下のような補完資料の組み合わせが有効とされています。

補完資料の例 内容 ポイント
在留証明書(在外公館発行) 現住所が記載された証明書 パスポートでは住所確認ができない国で特に有効
外国の運転免許証+翻訳文 写真付きで住所が記載された証明書 州や国によっては住所が未記載のものもある
銀行残高証明書・公共料金請求書等 氏名と住所の記載がある補助的証明書 翻訳文+公証等による真正性の担保が必要な場合あり

また、こうした資料の有無を確認するのは登記申請の直前ではなく、就任承諾書の収集段階から並行して準備しておくのが安全です。
特に、登記期限が迫っている中で補正対応となると、書類の再取得に数週間を要することもあるため、計画段階から必要書類をリストアップし、候補国ごとの認証制度を確認しておくことが、補正リスクを減らすカギとなります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、外国人役員の本人確認証明書に必要な書類とは?署名証明書・宣誓供述書の違いと注意点について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、千代田区の司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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