利益剰余金を資本金に組み入れる方法とは?登記手続きと注意点を解説
剰余金の資本組み入れ
株式会社において「資本金を増やしたい」と考えたとき、新たな出資(増資)を受ける以外にも、自社の内部資源である「剰余金」を資本金に組み入れる方法があります。
中でも「利益剰余金の資本組み入れ」は、外部からの資金調達を伴わず、自己資本の厚みを示す方法として注目されています。
本コラムでは、利益剰余金を資本金に組み入れる際の法的根拠や登記手続き、実務上のポイントを、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
剰余金の種類と資本組み入れの対象
剰余金は大きく分けて、以下の2つに分類されます。
区分 | 内容 | 資本組み入れ可否 |
---|---|---|
資本剰余金 | 資本準備金、その他資本剰余金 | 〇 |
利益剰余金 | 利益準備金、その他利益剰余金 | 〇 |
利益剰余金を資本金に組み入れる手続き
利益剰余金を資本金に組み入れるには、以下のようなフローで手続きを進めます。
1. 組み入れ可能な剰余金の確認
資本金に組み入れることができるのは、「株主総会で承認された貸借対照表」に記載された剰余金に限られます。したがって、期中の利益は対象外です。
2. 株主総会による決議
株主総会(定時・臨時いずれも可)にて、以下の事項を普通決議で決定します。
・組み入れる金額
・組み入れの効力発生日
3. 商業登記の申請
登記申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
書類名 | 内容 |
---|---|
株主総会議事録 | 組み入れ金額・効力発生日の決議内容を記載 |
株主リスト | 決議時点の株主構成を示す |
剰余金計上の証明書 | 決議の対象とした利益剰余金が存在することの証明 |
登録免許税:資本金の増加額×0.7%(例:500万円の組み入れで登録免許税は3万5千円)
実務上の留意点
①債権者保護手続きは不要
資本金を減少させる場合とは異なり、剰余金の資本組み入れでは債権者保護手続きは不要です。これにより、決議と同日で効力を発生させることも可能です。
②税務上の影響に注意
資本金の増加により、以下のような税務上の影響が生じることがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
消費税免税事業者の判定 | 資本金1,000万円以上の法人は、設立初年度から課税対象に |
中小企業特例の対象から外れる可能性 | 所得拡大促進税制や外形標準課税の影響に留意 |
合同会社との違い
注意点として、合同会社では利益剰余金を資本金に組み入れることができません(会社計算規則第30条)。この点は株式会社との大きな制度的違いの一つです。
手続きのご依頼・ご相談
利益剰余金の資本金への組み入れは、新たな出資を受けずに資本金を増やす合理的な方法です。
登記手続きや必要書類の整備には、商業登記の専門家である司法書士にご相談いただくことで、スムーズな資本組み入れが可能となります。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。