新株予約権が行使不能となったとき、どのように処理すべきか
新株予約権の消滅・消却の違い
「行使不能による消滅登記」と「会社による取得・償却」の違いについて解説します。
会社が発行した新株予約権について、代表取締役や従業員などの地位を失ったことにより行使ができなくなった場合、この新株予約権はどのように処理すべきでしょうか。
このようなケースでは、実務上、次の2つの手続きが選択肢となります。
① 行使不能による消滅登記
登記簿に記載された新株予約権の行使条件(例:「役員・従業員であること」)を満たさなくなった場合、その時点で新株予約権は行使不能とみなされます。このように、行使の実体的要件が失われた場合には、「行使不能になったこと」を登記原因として、消滅登記を申請することが可能です。
この方法は、株主総会等の決議を経る必要がなく、簡便に処理できる点が利点です。
ただし、法務局によっては、行使不能であることを示す資料の提出を求められる場合があるため、たとえば従業員でなくなったことなど、事実関係を裏付ける書類の準備が必要になることもあります。
② 会社による取得・償却を経たうえでの消滅登記
登記簿上に、以下のような文言が記載されているケースもあります。
「新株予約権者が当社、当社の子会社または関連会社の取締役、監査役または従業員のいずれの地位も有しなくなった場合、会社は無償でこれを取得することができる。」
このような定めがある場合には、会社が新株予約権を無償で取得し、償却(消滅)する手続をとることも可能です。
この方法では、まず株主総会または取締役会にて取得日を定める決議を行い、その後、会社による取得・償却手続きを経て、消滅登記を申請するという流れになります。
一手間はかかりますが、契約書や登記簿の定めに基づく明確な手続きとなるため、法的安定性や外部説明力に優れる点がメリットといえるでしょう。
どちらの手続きが適切か?
どちらを選択すべきかは、以下のような事情を踏まえて検討します。
判断基準 | 推奨される手続き |
---|---|
登記簿に「取得条項」がある | ② 会社による取得・償却 |
時間・手間をかけず処理したい | ① 行使不能による消滅登記 |
後日のトラブルを防ぎたい | ② 会社による取得・償却 |
登記簿に条件しか書いておらず、取得規定がない | ① もしくは ②(実情に応じて) |
手続きのご依頼・ご相談
新株予約権の消滅処理は、行使不能=自動的に消えるということはなく、どのような定めがあるか、どういった立場変動があったのかによって、対応が分かれます。
司法書士は、新株予約権の定めに従った適切な消滅登記の選択と、必要書類の整備まで一貫してサポートが可能です。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。