取締役会議事録の押印義務と対象者について解説
取締役会議事録
会社運営において、代表取締役の選任や本店移転などの重要な決定が行われた場合、それらの内容を正式に記録するために取締役会議事録が作成されます。
取締役会議事録は、法務局への登記申請時に提出が求められることがあり、適切な押印がされているかどうかが、登記手続きのスムーズな進行に大きく影響します。
本記事では、取締役会議事録への押印義務と、押印が必要な対象者について解説していきます。
取締役会議事録の押印義務とは?
取締役会を設置している株式会社では、取締役会の決議を記録するために取締役会議事録を作成することが義務付けられています。
また、商業登記に関する手続きでは、取締役会議事録が登記申請の添付書類となることがあるため、適切な押印が求められるケースがあります。
特に、代表取締役の選定を行った取締役会議事録の場合、押印の方法に注意が必要です。
場合によっては、実印の押印と印鑑証明書の添付が求められるケースもあるため、事前に確認することが重要です。
取締役会議事録への押印が必要な対象者とは?
取締役会議事録の押印義務については、会社法第369条 に規定されています。
具体的には、以下の者に押印義務があります。
押印が必要な対象者
・取締役会に出席した取締役
・取締役会に出席した監査役(監査役設置会社の場合)
つまり、「取締役会に出席した取締役と監査役全員」が押印を求められる対象者となります。
押印義務がある理由としては、議事録に異議を留めない=決議に賛成したと推定されるため、その意思を示すために押印が求められています。
また、監査役については、取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べる義務があるため、その証明として押印を求められることになります。
取締役会議事録の押印に関するルール
取締役会議事録の押印に関しては、特に決まりはありませんが、以下のような点に注意が必要です。
認印でよいケース
通常の取締役会議事録であれば、出席した取締役・監査役の押印は認印で問題ありません。
実印が求められるケース
一方で、代表取締役を選定する取締役会議事録の場合 には、「出席取締役および監査役の個人の実印での押印」と印鑑証明書の添付が求められるケースがあります。
これは、代表取締役変更の登記申請において、取締役会議事録の押印が「個人の実印」であることを証明するために、印鑑証明書の添付が求められるためです。
しかし、以下の場合は、実印ではなく認印で問題ないケースもあります。
・ 会社実印を届け出ている代表取締役が取締役会に出席し、会社実印で押印している場合
→ この場合、取締役・監査役の個人の実印押印+印鑑証明書添付は不要となります。
・ 代表取締役が再任される場合
→ すでに登記されている代表取締役が継続するケースでは、会社実印での押印のみで手続きが可能な場合があります。
取締役会議事録の電子署名対応について
近年、書面で作成するだけでなく、電子文書で取締役会議事録を作成するケースも増えています。
電子文書で作成された場合、物理的な押印は不可能となるため、押印の代わりに電子署名を施すことが必要 となります。
電子署名の要件
取締役会議事録に電子署名を行う場合、法務省が認める電子証明書を利用することが必須となります。
具体的には、マイナンバーカードの電子署名(公的個人認証サービス)や、法務省が認定する電子契約サービスを利用することが推奨されます。
また、最近ではクラウド型の電子署名サービス も認められるようになってきました。
法務省は、「取締役会に出席した取締役や監査役が、議事録の内容を確認し、異議がないことが明確であれば、クラウド型の電子署名でも有効」との見解を示しています。
手続きのご依頼・ご相談
本日は取締役会議事録の押印義務と対象者について解説しました。まとめると
・取締役会議事録への押印義務があるのは、出席した取締役・監査役全員
・通常の取締役会議事録は認印で問題なし
・代表取締役の選定がある場合、実印と印鑑証明書が必要になることがある(例外あり)
・電子文書の場合、電子署名が押印の代わりになる
取締役会議事録の押印は、登記申請において重要なポイントとなります。
また、業務の効率化の観点から、電子署名の導入についても検討することで、会社運営の負担を減らすことができるでしょう。
適切な押印・電子署名の方法を理解しすることが重要