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募集株式の引受人から引受額の一部しか入金されなかった場合

募集株式の引受人から引受額の一部しか入金されなかった場合



募集株式の引受人は、払込期日までに払込金額を全額払い込む必要がありますが、なかには出資の履行が一部しかなされないケースがあります。
このコラムでは、募集株式の引受人から引受額の一部しか入金されなかった場合について、わかりやすく解説していきます。

募集株式の引受人による払い込み

会社法では、募集株式の発行手続きにおける引受人の出資の履行について、次のように規定しています。

(出資の履行)
第二百八条 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

そして、引受人が払込期日までに払込金額の全額が入金されない場合には、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失います(会社法208条5項)。

引受人から出資の履行が行われなかった場合

払込期日までに引受人から出資の履行が行われなかった場合について、「引受人の一部が出資の履行をしなかった場合」と「払込金額の一部しか振り込まれなかった場合」に分けて解説していきます。
なお、募集株式の発行については、次の条件を前提とします。

【前提条件】
発行会社:X(発行済株式数10,000株、資本金100万円、資本準備金0円)
引受人:A・B・Cの3名(社)
払込金額:1株につき10,000円
新規発行する株式数:3,000株(1名(社)につき1,000万円出資)


引受人の一部が出資の履行をしなかった場合

A・B・Cから募集株式の引受けの申込みがあり、それぞれに1,000株ずつ割り当てたものの、払込期日までにCから払込金額の全額の払い込みがなかった場合、Cは株主となる権利を失います。
この場合、A・Bに対して1,000株ずつ発行し、払い込みがあった2,000万円につき、株主総会で決定した募集事項に従って資本金と資本準備金に振り分けることになります。

※ 株式会社では、資本金として出資された財産の額のうち2分の1を超えない額については、資本金ではなく資本準備金として計上できます(会社法第445条2項)。
なお、総数引受契約方式(会社法205条)において、引受人の一部が出資をしなかった場合でも同様の対応を取ることになります。

この場合、募集株式の申込みが総数引受契約方式であることを明示するために、払い込みがなかったCとの総数引受契約書も登記申請の添付書類として提出するのが良いでしょう。

払込金額の一部しか振り込まれなかった場合

A・B・Cから募集株式の引受けの申込みがあり、それぞれに1,000株ずつ割り当てたものの、払込期日までにCが払込金額の一部しか払い込まなかった場合、Cは株主となる権利を失うようにも思えます。
しかし、募集株式の払込金額は、募集株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額のことを指すため(会社法199条1項2号)、Cは払い込み金額に対応する株式が付与されることになります。

たとえば、払込期日までに1,000万円の払い込みが必要であるところ、900万円しか払い込みがなかった場合には、Cには900株が付与されることになるでしょう。

払込金額の一部しか振り込まれないケースとしては、振込手数料を考慮せずに振り込んでしまったり、海外からの送金に伴い、為替や手数料の関係で払込金額が不足してしまう、などが考えられます。
この場合、払い込まれた金額の端数を預かり金とする場合、株主総会での決議後に、当該預かり金を株式に切り換える(DES)するケースもあるでしょう。

なお、総数引受契約方式(会社法205条)において、払込金額の一部しか振り込まれなかった場合でも、同様の対応を取ることになります。

手続きのご依頼・ご相談

募集株式の発行手続きにおいて、払込金額の一部しか振り込まれなかった場合には、原則払い込み金額に対応する株式が発行されます。
本日は募集株式の引受人から引受額の一部しか入金されなかった場合について解説しました。
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