後見開始の審判を受けた合同会社社員の退社と登記手続き
後見開始の審判を受けた合同会社社員の退社と登記手続き
合同会社の社員の退任事由
合同会社においては、下記のような事由によって社員は退社すると定められています。
社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
中でも、(七)における後見開始の審判を受けた場合の手続きについて解説します。
後見開始の審判があった場合の役員の退社
後見開始の審判によって、認知症や意思能力の低下などの理由によって判断能力を欠く常況にある人が成年後見制度を利用することができます。
社員が後見開始の審判を受けた場合は、会社法607条の規定により退社することになります。
退職する社員が、業務執行社員であった場合は、その変更登記も行わなければなりません。また、持分の払戻によって資本金が減少した場合も、その登記が必要です。
なお、定款に別段の定めがある場合は、後見開始の審判を受けた場合であっても、これをもって退社とはなりません。
しかし、後見開始の審判を受けた社員が会社の意思表示に携わるような重要な任務を任されることは考えにくいため、このような規定を定める合同会社は多くはありません。
後見開始の審判を受ければ社員を退職すると考えるのが一般的です。
退社する社員の持分の払戻し
社員が退社となった場合、合同会社は、退社する社員の持ち分を払い戻ししなければなりません。
退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。ただし、第六百八条第一項及び第二項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。
2 退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。
この金額は、社員が支払った金額を返金するのではなく、会社の財産状況によって計算されます。
会社が利益をあげていなければ減額となる可能性もありますし会社が成長していれば、払い戻し分もそれに伴って大きくなる可能性があります。
社員が欠けたことによる解散のリスク
社員が後見開始の審判を受け退社した場合、これによって社員が欠けてしまった場合は、会社の解散事由になってしまいます。
持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第二項の規定による解散を命ずる裁判
したがって、社員の退社とともに、解散の手続きも行わなければなりません。
社員がいない場合でも、定款に清算人の定めがある場合は、そのものが清算人となります。
しかしその旨の記載がない場合は、裁判所が利害関係人の申し立てにより清算人を選任することになります。
清算人は解散の手続きを行うなどして登記をする必要があります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は後見開始の審判を受けた合同会社社員の退社と登記手続きについて解説しました。
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