会社設立における発起人の責任と会社設立無効について解説
株式会社設立登記前と登記後における発起人の責任などを解説
発起人の責任
会社設立において会社が成立しなかった場合、発起人は連帯して責任を負わなければなりません。
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
「成立しなかったとき」とは、設立の手続きが設立登記に至る前に頓挫してしまった場合や事実上・法律上会社が存在するに至らなかった場合を指します。
発起人が負わなければならない責任とは以下の通りです。
②設立に関して支出した費用の負担(会社法56条後段)
発起人の無過失責任
株式会社の設立にあたって、募集設立の方法を用いた場合、設立時募集株式の引受人から払込金を受けることになります。
この払込金は、会社が成立しなかった場合、返還しなければなりません。引受人への返還は、発起人が連帯して責任をおいますが、この責任は、無過失責任であるとされています。
したがって、発起人に過失がない場合であっても返還しなければなりません。会社法56条の意義は、主に株式引受人の保護を図るために発起人に全責任を負わせたものであるとするのが有力です。
また、設立に関して支出した費用とは、定款認証の手続きにおける手数料など、会社設立に関して支出した費用です。これらの全ては発起人が負担しなければなりません。
設立登記後の責任
会社法56条にいう「会社が成立しなかったとき」とは、設立登記に至る前の段階のみを指します。
したがって、設立登記が完了した後は、会社法56条は適用されません。
会社設立の無効
会社の設立登記は完了しているが、設立の手続きなどに瑕疵が存在し、会社の成立が認められない場合は、「会社設立の無効」となります。
会社手続きの外形が存在しない場合や、会社としての実態を欠く場合は、誰でも会社の不存在を主張することができます。会社設立の無効の場合は以下の条文が適用されます。
① 発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
② 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
発起人、設立時取締役又は設立時監査役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役又は設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
なお、会社設立無効は、会社設立から2年以内に訴えをもってのみ主張することが可能です(会社法828条)。
会社設立が無効の場合は、会社法56条ではなく、会社法53条・54条の適用となります。発起人は、善良な管理者の注意をもってその設立手続きを進行する責任を負っているので、会社設立無効になった場合は、これによって生じた損害を賠償しなければなりません。会社法53条2項においては、第三者保護を図り、発起人に責任を負わせています。また、会社設立の無効となった場合、発起人は連帯債務者となって連帯して責任を負わなければなりません。
このように、会社の不成立においても会社設立の無効においても発起人は責任を負わなければなりません。
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本日は発起人の責任と会社設立の無効について解説しました。
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