募集株式の発行等(第三者割当て)の手続きとそれぞれの決議機関について解説
募集株式の発行等(第三者割当て)
募集事項の決定
株式会社が募集株式の発行等を行うには、募集事項を定めなければならない。募集事項とは、以下に掲げる事項となる。
2 払込金額
3 現物出資である場合はその旨、内容及び価格
4 金銭の払込・財産の給付の期間または期日
5 増加する資本金または資本準備金に関する事項
募集事項の決定機関は公開か否かによって異なる
①非公開会社
公開でない会社が第三者割当てによる募集株式の発行をする場合は、原則、株主総会の特別決議によって行わなければならない。
しかし、株主総会の決議によって1.募集株式の数の上限、2.払込金額の下限の2点のみを決定して、他の事項の決定を取締役会(取締役会非設置会社においては取締役)に委任することができる。
取締役会に委任をする場合は、登記申請の際、株主総会議事録のみでなく、取締役会議事録も添付しなければならない(取締役会非設置会社であれば取締役の決定書となる)。
また、募集株式の払込期日が決議の日から1年以内であること、若しくは、募集株式の払込期間の末日が決議から1年以内であることを要する。
なお、種類株式発行会社において、譲渡制限株式を発行する場合、発行する当該種類株式を保有する株主による種類株主総会の特別決議を要する(会社法199条4項)。これは、譲渡制限種類株式が発行されることによって、新しい株主が増え、既存株主の持株比率が下ることや、従前の株主構成が変化することなど、既存株主に大きな影響を及ばせる可能性があるので、会社法にて種類株主総会の承認を要することが定められている。
②公開会社
公開会社が第三者割当てによる募集株式の発行をする場合、原則、募集株式事項の決定機関は取締役会となる。
取締役会によって募集事項を決定した場合、株主に対して募集事項を通知しなければならない。したがって、定めた日から2週間前までに株主に対して募集事項を通知しなければならないので、決定日と払込期日若しくは払込期間の初日の間に2週間の期間を設ける必要がある。
この期間は、募集株式の発行等によって既存株主の既得権を侵害するおそれがある場合に、募集株式の発行等をやめることの請求をする機会を与えるものでもあるので、この期間を設けていない場合、募集株式の発行等についての登記を申請することはできなくなってしまう。ゆえに、2週間の期間を設けないで申請する場合は、添付書類として株主全員の期間短縮の同意書と株主リストを提供しなければならない。
なお、上場会社の場合は、開示方法として金融証券取引法上の開示を行うことで会社法上の公示として取り扱われるものとされていますので、実務上はこの2週間要件を最重要論点として検討するまでは必要ないといえます(会社法201条5項、会社法施行規則第40条)。
有利発行
また、募集株式の払込金額が募集株式を引き受けるものに特に有利な金額である場合(有利発行)、公開会社であっても募集事項は株主総会の特別決議によって決定しなければならない(会社法199条2・3項、201条1項、309条2項)。
有利発行である場合、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
「特に有利な金額」とは、構成な価格と比較して特に低い金額であると解されている。市場価格がある場合であれば公正な価格は通常の株式の時価となる。しかし、市場価格がない場合、判例では、非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって決定した発行価格であるとしている。
特定株主がいる場合の対応
そして、公開会社の第三者割当てにおいて、特定株主(支配株主)となるものがいる場合、株式会社は、その者の氏名・名称または住所を、払込期日・払込期間の初日の2週間前までに株主へ通知することを要する(会社法206条の2)。
支配株主の異動によって公開会社の経営に大きな影響を及ぼすことになる。したがって、この期間は、情報を開示して株主の意思を問う期間を設けるという意図で定められている。この場合、総株主の10分の1以上が反対すれば、株主総会の普通決議による承認が必要となるが、財政状況の悪化などによる公開会社の存立を維持するために緊急の必要がある場合には、当該決議は不要となる。
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本日は募集株式の発行等(第三者割当て)の手続きとそれぞれの決議機関について解説しました。
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