抵当権とは?法的性質など基本解説
抵当権の法的性質など基本解説
抵当権の性質
不動産を購入する上で最も多く利用されている抵当権であるが、その性質をよく理解せずに利用している設定者も多いのでないだろうか。
抵当権は、債権者や第三者が占有を移転せずに抵当権設定不動産を担保に共することを可能とするため、売買契約や使用貸借契約の際に用いられることが多く、設定者がそのまま不動産を使用し続けることができる点が大きなメリットとなり、広く利用されている。ゆえに、債務不履行となり抵当権設定不動産が競売にかけられることさえなければ、何ら問題なく使用し続けることができる。しかし、債務不履行となり競売にかけられることになると、抵当権の性質は設定者に大きな影響を及ぼすこととなる。
抵当権の成立要件
まず、抵当権の成立要件である。①担保物件は債権に附従するので、被担保債権の存在がなければ成立しない。いわゆる消費貸借契約に基づく借金返還請求権や売買契約に基づく代金支払請求権が存在することが抵当権の成立要件となる。②抵当権の設定する旨の契約をすることが要件となる。③契約当時、設定者は目的不動産を所有していたこと。抵当権の設定契約は、諾成契約であり目的物を所有する者でなければ契約することができない。債務者のために物上保証人が担保を提供する場合であっても、物上保証人と抵当権設定者によって契約がなされなければならない。
他の担保権との違い、特徴
次に、先にも述べたように、抵当権の設定には占有を要さない。質権であれば、質権者が物を受け取って占有することを要するので、公示の必用はなく、登記することはできない。それに対して、占有を要さない抵当権は、登記しなければ第三者に対抗することはできない。ここで問題となるのが、抵当権には妨害排除請求権があるのか否かという点にある。占有ができないのであれば、原則、妨害排除請求権は発生しない。
しかし、不動産の交換価値を侵害するような行為が行われた場合であっても抵当権者自身がそれを排除することができないこととなると、抵当権者の優先弁済請求権の行使が不可能となってしまう。そこで、判例(最高裁平成11年11月24日判決民集第53巻8号1899頁)では、一定の要件のもとで抵当権者が抵当不動産の所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することを認めている。代位行使が認められた場合、直接抵当権者に建物を開け渡すように求めることができる。
抵当権の効力の及ぶ範囲
そして、抵当権の実行によって、最も大きな問題となるのは、その効力の及ぶ範囲である。付加一体となっている付従物であれば、別段の定めがある場合を除いて、抵当権は及ぶとされている(民法370条)。
しかし、従物には争いがある。例えば、根付いた立木であれば付従物となるが、主物と独立性のある家具などは従物となる。学説では、経済的価値的一体性が認められれば370条を類推適用させ、抵当権の効力が及ぶとこを認めている。
それに対して、判例(最判昭和44年3月28日民集第23巻3号699頁)では、宅地に対する抵当権の効力は、特段の事情のないかぎり、82条2項を採用し、抵当権設定当時右宅地の従物であつた石燈籠および庭石にも及び、抵当権の設定登記による対抗力は、右従物についても生ずるとしている。したがって、判例では、抵当権の設定前からおるものか後に発生したものかによって判断している。では、従物に対する対抗要件はどのように考えられているのであろうか。原則、不動産以外の物に対して登記することはできないので、177条の対抗要件は具備できない。しかし、判例では、設定前からの従物に対しては177条と370条によって従物の対抗要件とすると判断している。
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本日は抵当権の法的性質など基本について解説しました。
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