株式交付とその手続について,株式交換との違いや手続きを解説
株式交付とその手続について
株式交付制度とは
株式交付制度は、令和3年3月1日に施行された「会社法の一部を改正する法律案」の一つであり、自己株式を対価とした容易な親子会社関係の創設を可能とする組織再編類型として創設された。
原則、M&Aの場面では、Mergers(合併)とAcquisitions(買収)という名の通り、他社を完全子会社するために、金銭その他の財産の交付するため、多額の資金調達が必要となる。
それに対し、株式交付では、他社を子会社化するために支払う対価として、自社株式の交付が認められており、金銭交付のための資金調達や、現物出資における検査役員・財産価格補填責任などの負担を負うこともない。
株式交換との違い
また、株式の取得によって親子関係を形成する株式交換との違いは、株式交換が完全親会社となることを目的としているのに対し、株式交付では子会社における発行株式の50%超を目的としている。そのため、一部の株主から任意でその株式を個別に譲り受ける制度であり、より合理的なスキームであるといえる。では、株式交付制度を利用するにあたって必要な手続きとはいかなるものであろうか。
株式交付制度利用にあたり必要な手続き
まず、株式交付計画の作成が必要となる(会社法774条の2後段)。株式交付は、株式交付親会社と株式交付子会社の株主との間で個別の合意によって行われるので、当事会社は株式交付親会社のみとなる。
したがって、他のスキームと違い、株式交付計画の作成はより合理的に進めていくことができる。また、株式交付計画において、必要とされるのは、取得株式の下限数である。株式交付子会社との親子関係を形成するにはその株式の50%超を必要とするため、下限数を明確にしなければならない。
次に、事前開示である(816条の2)。株式交付親会社は、株式交付計画備置開始日から株式交付がその効力を生ずる日後6ヶ月を経過するまでの間、本店にて、株式交付計画書の書面または電磁的記録を備え置かなければならない。
そして、株主総会の承認を要する。この場合、簡易手続きによるものであれば、株主総会の承認を要しない。また、株式交付は、株式交付子会社の株主に対して任意でその株式を個別の譲り受ける制度であるので、株式交付子会社における株主総会は要せず、株式交付子会社の株主には株式買取請求権は認められない。それに対して、株主総会の承認を要する場合において、株式交付親会社の反対株主は、株式交付親会社に対し、株式買取請求をすることができる。この権利は、当該株主総会において議決権を有さない株主も対象とされている(816条の6)。原則、株式交付においては、債権者保護手続は不要とされている。しかし、株式交付親会社の株式以外の金銭等が対価とされる場合においてのみ、債権者保護手続が必要となる。
さらに、譲渡しの申込をしようとする者へ、①株式会社の称号、②株式交付計画の内容、③法令省令で定める事項などの一定の事項を通知しなければならない。また、申込をした者の中から割当を受ける者、割当の数を決定し、それを通知することを要する。申込者は、株式交付効力発生日においてその株式の給付義務を負うこととなる。もっとも、申込期日までに株式交付計画において定めた下限数に満たない場合は、株式交付の適用はなく、交付をしない旨を通知しなければならない。
最後に、効力発生日において、株式交付親会社は、譲渡人から給付を受け、株式交付子会社の株式を取得し、株式交付子会社を子会社とすることとなる。また、株式交付親会社は親会社となる。
手続きのご依頼・ご相談
本日は株式交付とその手続きについて解説しました。
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