相続、遺産承継業務

相続放棄の取消しをすることは出来るのか?例外的に錯誤取消しが出来る場合

相続放棄を取消しをすることは出来るのか?例外的に錯誤取消しが出来る場合


錯誤による相続放棄

民法では、意思表示は、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができると定めている(民法95条)。判例では、錯誤の意義は、「意思表示の錯誤というのは内心的効果意思と意思表示の内容たる表示意志との不慮の不一致である(大判大3・12・15民録20・1101)」としており、いわゆる勘違いがこれにあたる。では、錯誤によって相続の放棄をしてしまった場合、それを取り消すことはできるのであろうか。

相続放棄は原則取消し不可

まず、相続放棄には熟慮期間が設けられている。
相続放棄の効果は絶対的であるので、安易に判断することはできない。したがって、民法では、相続人が自己のために相続があったことを知った時から3か月以内を相続継承又は放棄するべきかの熟慮期間として定めている(民法915条)。
しかし、この熟慮期間中であっても、一度相続放棄をしてしまうと、撤回することは許されていない(民法919条1項)。なぜなら、相続放棄は相続開始に遡って効力を生じるので(民法939条1項)、相続を放棄したものは、最初から相続人とならなかったものとみなされてしまうからだ(最判昭42・1・20民集21・1・16)。
ゆえに、熟慮期間内であっても一度家庭裁判所に放棄を申請すると、相続開始がなかったのと同じ地位におかれてしまうので、相続放棄の撤回は不可能となる。相続問題においては、他にも相続人が何人もいる場合が多いので、安易に相続放棄を撤回できてしまうと、法的安全性の確保は難しくなってしまう。よって、民法ではこのような厳格な基準を定めているのである。

例外的に認められる取消し

このように、原則には絶対的効果を有する相続放棄であるが、919条2項では、「前項の規定は、第1編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない」と定め、例外的にその取消しを認めている。
まず、総則編の規定によって取消しすることができる場合とは、

①未成年者のした法定代理人の同意のない承認・放棄(5条1項、2項)
②成年被後見人のした承認・放棄(9条)
③被保佐人のした保佐人の同意のない承認・放棄(13条)
④同意権付与の審判を受けた被補助人のした補助人の同意のない承認・放棄(17条)
⑤錯誤、詐欺、強迫に基づく承認・放棄(95条、96条)



である。次に、親族編の規定によって取消すことができる場合とは、
①後見監督人があるときに、後見人が後見監督人の同意を得ないで被後見人に代わってした承認・放棄(864条、865条)
②未成年後見監督人があるときに、未成年後見人が未成年後見監督人の同意を得ないで未成年後見人が未成年被後見人の行為に同意を与え、それに基づいてした未成年被後見人の承認・放棄(867条)である。
したがって、相続放棄の意思が、総則編の規定によって取消しすることができる場合の⑤に当たる「錯誤・詐欺・強迫」による場合、相続放棄の取消しは認められる。ただし、取消権の行使には期限が定められており、追認できるときから6か月または放棄の時から10年以内に家庭裁判所への申述によって行わなければならない。

基本は訴訟を行い個別判断となる

このように、民法は例外的に錯誤による相続放棄の撤回を認めている。最判昭和40年5月27日集民第79号201頁では、相続放棄の申述についても民法95条は認められると判じしている。しかし、判例では詐欺・強迫とは異なり、それぞれの事件によって錯誤による取消しを認めるか否かを判断している。ゆえに、錯誤による相続放棄を相続財産の取戻しを図ることは権利の乱用であると判断される場合もあるが、訴訟を行うことによって、法律の上で無効としたい原因がありその事を主張する事によって利益があると認められる可能性もあるので、個別の案件よって判断しなければならない。

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本日は相続放棄の取消しができるのかなどについて解説しました。
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