簡易株式交付の要件を解説、認められる場合、認められない場合
簡易株式交付が認められる要件について
子会社化する方法
株式会社がほかの株式会社を子会社にする手段としては、ほかの株式会社の株式をすべて買い集めて取得する方法のほか、自社の株式を他の株式会社の株式と交換する株式交換でも行うことが可能です。
高額な取得費用を用意する必要がなく、自社株と交換すれば良いので便利な手段です。
もっとも、株式交換による子会社化は、100%株式を取得する完全子会社化にしか認められていません。
完全子会社化する必要はないけれど、一定の資本関係を持って関係を強化したいといったニーズがあったことから、新たな組織再編制度として株式交換制度が設けられました。
簡易株式交付について
株式交付を行う場合、原則として親会社側の株主総会において特別決議を得なくてはなりません(会社法816の3条)。
子会社の株主が親会社の株式を取得することになるため、株主構成が変わり、親会社の株主にも影響があるためです。
ただし、簡易手続きが認められていて、簡易株式交付にあたる場合には、株式総会の特別決議は不要です。
簡易株式交付の要件は、以下の場合を除いて、譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式等の対価の額の合計額が株式交付親会社の純資産の1/5を超えない場合は株主総会の決議を省略することができます(会社法816の4)。
なお、株式交付は議決権50パーセント以下であった株式会社を50パーセント超の子会社化するための制度であるため株式交換で議決権割合90%以上を有している場合に認められるいわゆる略式手続きはありません。
簡易株式交付が認められない場合
株式交付の割合が親会社の純資産額の20%以下となる場合でも、一定のケースでは簡易株式交付が認められず、株主総会の特別決議の省略ができない場合があるので注意が必要です。
ロ 株式交付親会社が譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式等以外の金銭等の帳簿価額が、株式交付親会社が譲り受ける株式交付子会社の株式等の額を超える場合(株式交付損が生ずる場合
ハ 一定数の株式を有する株主が株式交付に反対する旨の通知をした場合
1つ目は親会社が譲渡制限株式会社である場合です。
譲渡制限は株主同士の結びつきが強く、第三者が承諾なく株主にならないようになされている制限です。
にもかかわらず、簡易株式交換が認められては、譲渡制限株式の意味がなくなるので、株主総会の特別決議の省略は認められません。
2つ目は、親会社側に株式交換差損が発生してしまう場合です。
差損が生じると親会社の資産にも影響を与え、株主の配当可能利益も減るなど、影響が生じます。
そのため、株主総会の特別決議で賛成を得なくてはなりません。
3つ目は、親会社の株主のうち総株式数の6分の1超の株主が株式交付に反対を表明している場合です。
反対株主には株式買取請求権が認められますが、株主は株式交付の効力発生前20日前から反対を表明しなくてはなりません。
この反対株主が総株式数の6分の1を超えると、簡易株式交付ができなくなります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は簡易株式交付の要件を解説しました。
簡易株式交付の開示や支援など手続きのご依頼ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。