権利義務取締役になる要件とその役割について
権利義務取締役になる要件と役割
権利義務取締役とは
取締役は定められた任期満了時か、自ら辞任をした時に退任します。
取締役は会社の経営を担う重要な人材であるため、もし取締役全員が任期満了や辞任で退任することになれば、会社の経営判断に支障が生じる場合や事業が停滞しかねません。
そこで、会社法では任期満了や辞任により取締役が退任する場合、取締役の退任によって法定の取締役数を満たさなくなる際は、後任者が就任するまで、取締役としての権利義務を有すると定めました。
実際には退任しながらも、後任者が就任するまで取締役としての責任を担う場合を、権利義務取締役と呼びます。
権利義務取締役になる要件
権利義務取締役になる要件は、取締役が任期満了または辞任によって退任することで、取締役が誰もいなくなる場合か、会社法または定款で定められた取締役の人数を下回る場合で、会社法第346条1項に定められています。
会社法で定められた取締役の人数は、取締役会設置会社なら3名以上、取締役会非設置会社では1名以上です。
取締役会非設置会社においても、定款で取締役3名以上を置くと定めていれば、定款に定めた人数に従います。
ケーススタディ
取締役会設置会社において、3名の取締役が同時に任期満了を迎えました。
後任者として2名が決まっていますが、もう1名がまだ決まっていません。
この場合に、退任する3名のうち2名は退任し、1名だけが権利義務取締役として残り、後任者2名と取締役としての業務を遂行することは認められません。
退任する3名すべてが権利義務取締役となり、後日、3名以上の後任の取締役が選任されたら、3名が権利義務取締役を退任することができます。
権利義務取締役の権限
権利義務取締役は取締役を退任しても、引き続きその権利義務を負うことになります。
そのため、権限は通常の取締役と同じです。
取締役会の構成員として、会社の業務執行の重要事項の決定をすることが可能です。
権利義務取締役の退任
通常の取締役は株主総会の決議で選任されますが、権利義務取締役は株主総会の決議で選任されたのではなく、退任後に法律の規定により地位が与えられています。
そのため、株主総会の決議により解任することはできず、自ら辞任もできません。
次の取締役が選任されない限り、取締役として権利と義務の遂行が求められます。
権利義務取締役にならない要件
取締役が解任された場合や死亡した場合、欠格事由に該当して退任した場合には、実務上、権利義務取締役にならないとされています。
死亡の場合は事実上、取締役としての権利義務を全うできず、解任や欠格事由該当の場合には職務を執行するのに適さないからです。
まとめ
本日は権利義務取締役となる要件について解説しました。
役員変更に関するご相談は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。