株式会社と合同会社の違い~費用面・法律面・実態面で徹底比較
会社設立時に選択する会社形態で「株式会社にするか、合同会社にするか」と迷っていらっしゃる方が少なくありません。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、
- どちらの方がメリットが大きいのか
- どちらの方がより自社に適しているのか
という部分を見極める必要があると言えるでしょう。
この記事では、株式会社と合同会社の違いについて、「設立費用面」「法律面」「実態面」で比較してご紹介していきます。
4種類ある会社の形態
会社の形態は、大きく2種類あり「株式会社」と「持分会社」に分けることができます。
さらに「持分会社」は3つに分けることができ、「合同会社」「合資会社」「合名会社」が存在します。
つまり、会社形態は株式会社を含み4種類あることが分かりますが、「合資会社」「合名会社」は経営者に対するリスクがあるために、実質的には見かけなくなっています。
また、会社法が施行される以前に設立された「有限会社」がありますが、こちらは現在、新設できません。
そのようなことから、株式会社と合同会社のどちらにするか、迷われることになるのです。
【設立費用面】での株式会社と合同会社の違い
株式会社 | 合同会社 | |
定款用収入印紙代
(電子定款では不要) |
40,000円 | 40,000円 |
公証人に払う手数料
(定款の認証) |
52,000円 | – |
登録免許税 | 資本金の0.7%と150,000円を比較し高い方の金額 | 60,000円 |
株式会社と合同会社を設立にかかる法定費用で比較してみると上記の通りとなっています。
法定費用ですから、役所に必ず支払わねばならない費用です。
ただし、「定款用収入印紙代」の40,000円については、定款に貼付するための収入印紙代となっていますので、「電子定款」を選択することによって不要となります。
株式会社の登録免許税については、資本金の0.7%と150,000円を比較し、高い方の金額が登録免許税の費用となります。
そのため、
- 株式会社の設立するための法定費用は、電子定款を利用した場合には202,000円~
となっており、
- 合同会社を設立する法定費用は、電子定款を利用した場合には60,000円
となります。
資本金は、株式会社・合同会社共に1円から設立が可能となっています。
【法律面】での株式会社と合同会社の違い
株式会社 | 合同会社 | |
設立に必要な人数 | 1人 | 1人 |
出資者の責任範囲 | 有限 | 有限 |
決算公告 | 義務 | – |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の同意 |
株式会社・合同会社共に、会社設立に必要な人数は1人からとなっており、出資者は全員が有限責任となっています。
仮に事業を途中で中断するようなことになっても、個人で責任を取る必要はないのは、大きなメリットであると言えるでしょう。
決算公告は、株式会社においては義務となっており、合同会社は不要となっています。
「決算公告」とは、会社の事業年度の決算で作成した貸借対照表を、株式総会での承認後に官報などに掲載することを言います。
官報に掲載する費用は75,000円程度が必要であることから、合同会社ではこのランニングコストを削減させることができることになります。
最高意思決定機関については、株式会社では株主総会となっており、合同会社ではすべての社員の同意となっています。
意思決定のための議決権の割合は、株式会社の場合では出資割合に応じて決まっており、合同会社では出資割合に関係なく決めることができます。
【実態面】での株式会社と合同会社の違い
株式会社 | 合同会社 | |
組織運営の自由度 | 法令による規定が多い | 高い |
利益の配分 | 株数に応じる | 自由 |
資金調達の選択肢 | 広い | 狭い |
意思決定 | 株主に権限 | 合意形成が難しい |
知名度・認知度 | 高い | まだ低い |
冒頭から株式会社と合同会社の違いについてお伝えしてきましたが、ここではその違いによってどのような実態が生じているのか説明したいと思います。
組織運営の自由度
株式会社では、組織運営のための意思決定が株主総会によって行われることになります。
株主総会では、開催や決議される事項、取締役の権限・任期、取締役会の運営に関することなど、組織運営に関わるルールが明確に定められていますので、法令による規定が多いと言えます。
決算時には決算公告義務もあり、定期的な広告コストの負担も必要になります。
合同会社は、定款内容の自由度が高く、会社の状況に応じた内容によって定款を作成することができます。
利益配分については、出資比率に基づく必要はありませんし会社役員の任期もありません。また決算公告の義務もありません。
利益の配分
株式会社では、利益の配分は株数に応じて定められることになります。
例えば、「1株あたり1,000円の配当」と定めているような場合であれば、10株保有している人に対しては1万円の配当となり、100株保有していれば10万円を受け取ることができることになります。
合同会社では、出資比率に関係ない利益配分が可能となっています。
そのため、優秀な人材に対して利益配分を高めることができますので、出資は少なくともスキルや知識の高い社員に対して利益配分を手厚くするようなことができます。
資金調達の選択肢
株式会社は、事業拡大や設備投資などにおいて資金調達が必要な場合に、株を発行して資本を増やし、株主を募って出資を調達することが可能となっています。
集めた資金は企業の自由に使うことができ、しかも調達した資金を返済する義務がありません。
借入のように担保や保証人を用意する必要もありませんから、大きなメリットであると言えるでしょう。
合同会社には株式会社のように株式がありませんので、資金調達の方法は限定的であると言えます。
そのため資金調達が必要な場合には、国や自治体が行う補助金・助成金制度を活用することや、日本政策金融公庫などの融資利用などを検討しなければなりません。
意思決定
株式会社での意思決定については、株主総会において行われます。
株主総会での議決の割合は、出資割合に応じて決められていますので、自由に意思決定できないといった問題が生じることがあります。
合同会社の意思決定は、出資割合に関係なく社員の同意によって行われます。
株式会社の株主総会のようなものはありませんから、速やかに重要な内容を決めることができます。
ただし、事業がうまくいっているときやフラットなメンバー内であればスムーズに意思決定できますが、同意が得ることが難しいような状況も生まれてしまうことがあります。
知名度・認知度
株式会社は信用度という観点でみれば、知名度や認知度はとても高いと言えるでしょう。
そのため、事業拡大を視野に入れているような場合や、BtoBでの事業のような場合であれば、株式会社を選択することが適しているでしょう。
合同会社は増えつつありますが、社会的なイメージとしては株式会社よりも低いと言えます。
ただ、一般消費者にとって株式会社か合同会社が気にするような場面はほとんどありません。
「株式総会」や「決算公告」などの手続きが不要となることもあって、「Amazon」や「Google」などと言った大手外資系企業や、コダックや西友などの国内企業でも合同会社であることが分かります。
まとめ
株式会社と合同会社の違いについて、「設立費用」「法律」「実態」の3つの観点からご説明しました。
自身に適している会社の形態が見えてきたのではないでしょうか。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、どちらが優れているというものはありません。
しかし、目的や業種などによって、必ずメリットの大きい形態があるはずです。