総数引受契約における申込未了リスクの整理、複数引受人のうち一部が申込みを行わない場合の実務対応
募集株式の発行において引受人が複数人存在する場合
募集株式の発行を総数引受契約で行う場合、引受人が複数名存在するケースは珍しくありません。
このとき、実務上しばしば問題となるのが、
複数の引受人のうち、誰かが最終的に申込みを行わなかった場合でも、
その募集株式の発行は適法に成立するのか
という点です。
本稿では、この問いに対し、総数引受契約の法的構造と登記実務の整理から結論を導きます。

総数引受契約で問題になるのは「欠落リスク」
総数引受契約は、
募集株式の全部が引き受けられることを前提とした発行方式です。
したがって、引受人が複数名いる場合には、
・形式上は全員が引き受ける前提で契約している
・しかし実際には、一部の者が申込みを行わない
又は申込みを撤回する
といった事態が想定されます。
このような場合に、
「一部が欠けたことで総数引受契約が否定されるのか」
が実務上の関心事になります。
結論、申込未了が生じても違法とはならない設計が可能
結論から述べると、複数の引受人のうち一部が申込みを行わなくても、
その結果として引き受けられた株式数をもって
募集株式の総数と評価できるよう、あらかじめ設計しておくことは可能です。
重要なのは、「誰かが引き受けなかった」という事実そのものではなく、
当初の決議・契約において、その事態を許容する構造になっているかという点です。
募集株式の数を「確定数」としないという整理
この問題に対する実務上の解決は、募集株式の数を形式的な上限数として定めつつ、
・実際に申込みがなされた数
・実際に引き受けられた数
をもって、結果としての募集株式の数とするという構成を採ることにあります。
具体的には下記のように記載します。
ただし、申込みがこの数に満たない場合には、申込数をもって募集株式の数とする。
この一文が入ることで、誰かが申込まなかった場合、実際に引き受けられた株数が、そのまま「総数」になります。
すなわち、
・「○○株を募集する」
・ただし、申込みがこれに満たない場合には
・申込数をもって募集株式の数とする
という整理です。
この構成を採ることで、一部の引受人が申込みを行わなかったとしても、
その時点で引き受けられた株式数が「総数」となり、総数引受契約としての整合性が維持されます。
総数引受契約の本質は「引受意思の合致」にある
総数引受契約において本質的なのは、最終的に何株が引き受けられたかではなく、
当該募集において、引き受けられた株式の全部を引受人が引き受けるという構造があるかという点です。
そのため、
・引受人全員が連名した一通の契約書であるか
・各引受人が個別に契約しているか
といった形式は二次的な問題にすぎません。
個別契約であっても、
・各引受人が発行会社との間で引受契約を締結し
・それらが一体として「総数を引き受ける関係」にある
と評価できれば、総数引受契約として成立します。
本コラムのまとめ
複数の引受人による総数引受契約において、
誰かが申込みを行わなかった場合に、直ちに違法になるわけではありません。
重要なのは、その可能性をあらかじめ織り込んだ募集設計であれば、問題は生じないこと
逆に、申込数が欠けることを想定していない構成であれば、総数引受契約としての前提が崩れるおそれがあるということを念頭に
総数引受契約とは、「全員が必ず引き受けること」を要求する制度ではなく、「引き受けられた株式の全部を、引受人が引き受ける」
という関係を成立させる制度であるという理解が、実務上の出発点になります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、総数引受契約における申込未了リスクの整理、複数引受人のうち一部が申込みを行わない場合の実務対応について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。




