種類株式

種類株式発行会社が「特定の種類の株式のみ」を分割する場合の実務整理、普通株式だけを分割するときに、必ず立ち止まるべきポイント

種類株式発行会社におけるある種類の株式のみの分割

種類株式発行会社であっても、株式の分割自体は可能です。
また、すべての種類の株式を同一比率で分割しなければならないという決まりもありません。

実務上よくあるのは、
「普通株式だけを分割したい」
「優先株式(A種など)は触りたくない」
というケースです。

もっとも、ここには種類株式発行会社特有の落とし穴があり、
通常の株式分割と同じ感覚で進めると、後戻りできない論点にぶつかります。

種類株式発行会社でも「一部の種類だけ」分割できる

会社法上、株式の分割は、

・どの種類の株式を
・どの比率で
 分割するかを決めて行います。

したがって、普通株式のみを対象として株式分割を行うという設計自体は、制度上まったく問題ありません。
ただし、その瞬間から、「他の種類株式に不利益が及ぶかどうか」という別の検討が必要になります。

最大の分岐点は「他の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるか」

普通株式のみを分割すると、
・普通株式の発行済株式数が増える
・相対的に、他の種類株式の持株比率が下がる
という結果になります。

この点について、会社法は「損害を及ぼすおそれ」があるかどうかを基準に、追加手続きを要求しています。

ここでいう「損害」は、経済的損害に限られず、
・議決権割合
・残余財産分配時の相対的地位
などが不利になる可能性も含んで判断されます。

種類株主総会が必要になるのが原則

普通株式のみの分割によって、A種株式などの種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合、
原則として、その種類株主のみで構成される種類株主総会の決議が必要になります。

つまり、
・株主総会(または取締役会)の決議
・+A種株主の種類株主総会

という二段構えになるのが、基本形です。

スタートアップやベンチャーで、
「投資家の優先株が1種類だけある」
という会社ほど、この論点が真正面から出てきます。

定款に「種類株主総会を要しない」定めがあれば話は変わる

種類株式の内容として、
株式分割について種類株主総会の決議を要しない旨
が定款に定められている場合は、当該種類株主総会は不要になります。

この定めは、
種類株式を設計する段階で入れておくことが多く、VC投資が入る会社では比較的よく見られます。

一方で、
種類株式を発行した後にこの定めを追加する場合は、当該種類株主全員の同意が必要となります。
「後から入れればいい」という条文ではない点は要注意です。




発行可能株式総数・発行可能種類株式総数との関係

株式分割の結果、
・発行済株式数
・発行済種類株式数
が、定款で定めた発行可能株式総数または発行可能種類株式総数を超えてしまう場合には、分割に先立って定款変更が必要です。
ここで注意すべきなのが、種類株式発行会社では、分割に伴う「自動的な総数増加」が使えないという点です。

普通株式しか発行していない会社であれば、取締役会決議だけで対応できる場面でも、
種類株式発行会社では、
・定款変更
・原則として種類株主総会
がセットで必要
になります。

反対株主の株式買取請求にも注意

普通株式のみの分割が、
他の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合、
反対した種類株主には株式買取請求権が認められる可能性があります。

この場合、
・事前の反対通知
・決議への反対
といった要件を満たすことで、
公正な価格での買取請求が問題となります。

実務では、
「分割はテクニカルな話」と軽く考えて進めた結果、想定外にこの論点が浮上するケースもあります。

登記実務上の位置づけ

普通株式のみを分割する場合でも、登記では次の点を整理します。
・分割の対象となる株式の種類
・分割比率
・効力発生日

また、
・種類株主総会が必要か
・定款変更を伴うか
によって、添付書類の構成が大きく変わります。

登記の難易度は、分割そのものよりも、前提となる会社の設計次第
と言って差し支えありません。

本コラムのまとめ

種類株式発行会社が、
「特定の種類の株式だけ」を分割すること自体は可能です。

しかし実務では、
・他の種類株主に不利益が及ばないか
・種類株主総会を省略できる定款設計か
・発行可能株式総数との関係はどうか
といった論点が連鎖的に発生します。

普通株式しかない会社と同じ感覚で進めると、途中で必ず引っかかります。
種類株式発行会社は、通常の手続きと異なり、多くの論点が存在しますので、必ず意識して手続きをスケジューリングする必要があります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、種類株式発行会社が「特定の種類の株式のみ」を分割する場合の実務整理を行いました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから