一般財団法人

一般財団法人における評議員会の開催実務

招集・定足数・決議要件を体系的に整理

一般財団法人では、評議員会が必置機関とされており、その運営方法は株式会社の株主総会や一般社団法人の社員総会とは大きく異なります。
特に、定足数の考え方や利害関係を有する評議員の扱い、普通決議・特別決議の区分は、財団特有のルールが存在します。

本稿では、評議員会に関する代表的な条文と実務上押さえるべきポイントを、体系的に整理します。

評議員会の位置づけと開催区分

一般財団法人には、法律上、評議員会を必ず設置しなければなりません。
評議員会には次の2類型があります。

定時評議員会
事業年度終了後に必ず年1回開催(法人法179条1項)

臨時評議員会
必要に応じて開催(法人法179条2項)

決議できる事項は、法人法に規定されたもののほか、定款で評議員会の権限事項として定められた事項も含まれます。

評議員会を開催する際に決めるべき内容(招集手続)

評議員会を招集する理事(理事会設置法人では理事会)は、開催にあたり次の事項を決定する必要があります(法人法181条1項)。

・開催日時
・開催場所
・目的事項(議案がある場合)
・法令で定められたその他の事項(法人法施行規則58条)

招集通知の発送期限
招集通知は、原則として 開催日の1週間前まで に評議員に対して発送します。
定款で短縮することも可能です。

定足数(会議を成立させるための最低出席数)

評議員会が成立するには、原則として、
議決に加わることができる評議員の過半数の出席(法人法189条1項)
が必要です。
定款でより厳しい要件(例:評議員全員の出席)を定めることもできます。

利害関係を有する評議員の扱いが特徴的
一般財団法人では、特別の利害関係を有する評議員は定足数に算入されません。
また、その議案について議決に参加することはできません。
これは株式会社の株主総会や一般社団法人の社員総会の扱いと大きく異なる点であり、財団特有の注意ポイントです。

議決権の原則と普通決議の基準

議決権は「評議員1名=1議決権」という考え方が基本です。

●普通決議の成立要件
・出席した評議員の過半数の賛成
・かつ、定足数(出席評議員が過半数)を満たすこと(法人法189条1項)

普通決議のイメージ
評議員が5名の場合(定款の別段なし)
・定足数:3名以上の出席
・出席3名 → 2名以上の賛成で可決
・出席4名 → 3名以上の賛成で可決
(過半数=2名では足りない点が注意)

評議員会における特別決議

次のような重要事項については、普通決議ではなく、
議決に加わることができる評議員の3分の2以上の賛成 が必要となります。
・監事の解任
・役員等の責任一部免除
・定款変更
・事業譲渡
・継続
・合併契約の承認
(割合は定款でより厳しくすることも可能)

これらは財団法人のガバナンス上、特に重要な項目であるため、より高い議決要件が設定されています。

議決省略(みなし決議)

理事が提案した議案について、議決に加わることができる評議員全員が書面等で同意した場合、
その提案を可決したものとみなされます(法人法194条1項)。

この制度は、評議員の人数が限られている財団では頻繁に利用されることがあり、
招集通知・開催手続を省略できる実務上のメリットが大きい制度です。

まとめ、評議員会で特に注意すべき点

一般財団法人の評議員会は、株式会社とも一般社団法人とも異なる独自の実務があります。
・評議員会は必置機関であり、定時開催が義務
・召集時には日時・場所・目的事項の決定が必須
・招集通知は原則1週間前まで
・特別の利害関係を有する評議員は
 定足数にカウントせず、議決にも参加できない
・議決権は「1名=1議決権」
・普通決議:出席評議員の過半数
・特別決議:3分の2以上(科目ごとに法律で明記)
・全員同意によるみなし決議が利用可能

評議員会の手続は、法人のガバナンスに直結するため、「定足数」「利害関係」「決議要件」といった基礎部分を正確に運用することが重要です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、一般財団法人における評議員会の開催実務について解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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