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代表取締役の選定と印鑑証明書の要否を整理

表取締役の選定に伴う印鑑証明書の要否

本稿では、代表取締役の選定に伴う印鑑証明書(以下、印鑑証)の要否を、次の場面別に整理します。
1.代表取締役が死亡したとき(取締役会非設置会社)
2.取締役会を廃止しつつ代表取締役を選ぶ(同一総会/日を分ける)
3.代表権付与登記は要るのか(“登記の利益”の観点)

「どの書面に、誰の実印・印鑑証が必要か」を添付単位で明快にし、実務で迷いがちな“時間操作”の是非にも踏み込みます。

代表取締役の死亡(取締役会非設置)

典型事案
・取締役A(代表取締役)が死亡。取締役はB・C。
・後任代表取締役を株主総会で選定(取締役会非設置)。

添付の考え方(登記ごと)
・Aの退任(死亡)
 ・添付:死亡を証する書面(住民票除票等)
 ・印鑑証:不要

B(またはC)の代表取締役就任
・添付:選定を証する株主総会議事録
代表者印の届出は必要(=B本人の印鑑証はこの届出で提出)
・※議事録自体に出席取締役の実印・印鑑証は原則不要(議事録は就任の証明でなく、Cの退任等の証明として機能する位置づけのため)

取締役会を廃止しつつ代表取締役を選ぶ

1.同一の株主総会で「①取締役選任 → ②取締役会廃止」を決議
・かつては、①の時点では「取締役会設置会社」だから印鑑証不要という扱いがありました。
・現在の実務:時間の先後にかかわらず、同一総会で取締役会廃止も決議するなら、取締役の就任承諾書(または議事録)に実印を押し、該当する取締役の印鑑証を添付する取扱いが一般化。
・ねらい:印鑑証不要化のための“時間操作”を封じる。

2.株主総会を分ける(例:前日に取締役選任、翌日に取締役会廃止)
・前日の選任は取締役会設置会社のルールで処理されるため、印鑑証不要で通るのが通常。
・翌日に取締役会廃止・代表取締役選定を進める。

代表権付与登記は要るのか

・代表権付与→代表取締役選定→既存代表の退任…という実体の時系列があっても、
 代表権付与の登記は“登記の利益がない”として省略が通例(代表取締役の就任登記のみ)。
・取締役会非設置会社で代表取締役を選定する際も、代表取締役の就任登記と代表者印届出で足ります。

早見表(添付と印鑑証)

シーン 添付書類 実印・印鑑証の要否
代表取締役が死亡 死亡を証する書面 不要
後任代表取締役の就任(死亡後の株主総会選定) 株主総会議事録代表者印届出 議事録に印鑑証不要届出で本人の印鑑証は提出
同一総会で「取締役選任→取締役会廃止」 就任承諾書 or 議事録 印鑑証 要(同一総会は時間操作不可)
別日に「前日 選任/翌日 廃止」 就任承諾書 or 議事録 印鑑証 不要(前日は設置会社のルール)
代表権付与の登記 省略可


本コラムのまとめ

・死亡案件は、死亡書面+選定議事録+代表者印届出(本人印鑑証)で、議事録への印鑑証は通常不要。
・取締役会廃止と取締役選任を同一総会でやると、印鑑証が要(時間差は通用しない)。
・日を分ければ、前日の選任は設置会社ルールで印鑑証不要にできる。
・代表権付与の登記は省略し、代表取締役の就任登記に一本化。

「どの書面に誰の印鑑証が要るのか」を登記単位で切り分け、同一総会内の“時間操作は不可、別日は可”という実務基準で設計すると、補正や差戻しを避けやすくなります。

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本日は、代表取締役の選定と印鑑証明書の要否を整理について解説しました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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